ビタミンDは、末梢動脈障害の予防に有効。

ビタミンDは、末梢動脈障害の予防に有効。>


全身の動脈の中でも主に手足に血液を届ける動脈を「末梢動脈」と言います。

この末梢動脈に動脈硬化症が生じると、手足への血行不良が起こり、末梢動脈障害(PAD, peripheral artery disease)と呼ばれる病気になります。
しびれや痛み、悪化すると潰瘍ができたり、ひどい場合には壊死したりすることもあり、その予防は重要です。

さて今回、Yeshiva大学Albert Einstein医科大学のMichal Melamed博士らが、ビタミンDが末梢動脈障害の予防に有効とする研究結果を報告しましたので、お知らせします(米国心臓関連2008年度年会(American Heart Association's Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology Annual Conference 2008)
で発表されたものです)。

今までも、ビタミンDが血圧に関するホルモンを調節することや、血球細胞にはビタミンDに対するレセプターを持ち、血管に作用する可能性が示唆されていました。

そこで、この研究者らは、ビタミンDが直接PADの発症に関係するかも知れないと考え、4,839人の米国成人の血中ビタミンDレベルを測定したデータを再解析しました。
同時に、脚の血流を測定した足関節上腕血圧比(ABI, ankle-brachial index)や、コレステロール・血圧・糖尿病などのPADの他のリスクについても測定し、ビタミンD値との関係を調べました。

その結果、ビタミンD値が1ミリリットル中17.8 ng/mL以下の人では、PADの頻度は8.1%だったのに対し、29.2ナノグラム(ng/mL)以上の人では、PADの頻度は3.7%と大幅に低下していることがわかりました。

更にこれらの数値を、性別、人種、年齢、他の健康上の問題等を考慮して計算しなおしたところ、ビタミンD値の低い人は高い人に比べて、64%もPADになる頻度が高いことが明らかになりました。

ビタミンD値が10 ng/mL低下する毎に、PADのリスクは29%づつ増加することになるのだそうです。


さて、以上の結果は、ビタミンDはPADの予防に役立つように見えますが、本当にビタミンDが有効であると結論するにはやや早すぎるように思います。

ビタミンDのレベルは健康的な食事をしていることを示しているだけに過ぎない可能性もあるわけで、今後更にビタミンDとPADの因果関係については、詳しく調べる必要があると思われます。

とは言え、適切に太陽光を浴びたり、ビタミンDを含む魚類や乳製品を摂る事は健康によいことは間違いありません。
循環器系疾患の予防にも役立って欲しいと願っています。


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