アレルギー反応には、寄生虫治療?

● アレルギー反応には、寄生虫治療?


 喘息、アトピー性皮膚炎、或いは過敏性大腸炎などのアレルギー過敏反応が、
世界的に増えてきています。

 特に先進国で深刻な問題となっているのですが、その原因の一つとして、こ
れらの国では衛生状態がよくなりすぎたために、本来は外敵である寄生虫が身
体からいなくなり、持て余した免疫反応が自分自身を攻撃するようになったか
らではないか、という環境衛生説があります。

 さて今回、この説を支持する様々な例が報告され、 “寄生虫で医者いらず”
という考え方が専門家の間でも広まっていると話題をお送りします。

 この報告は、世界88ヶ国から2,000人の各国代表が集まった「寄生虫及び熱
帯病に関する国際寄生虫会議」(The International Congress of Parasitology,
2006)で議論されたものです。

 その議論を見ると、寄生虫を利用すれば喘息や炎症性大腸炎IBD, inflammatory
bowel disease)の様なアレルギー性疾患の治療に有効なことが実証されつつ
あるようです。

 グラスゴー大学寄生虫学Mike Barrett博士らによると、アレルギー性疾患は
西洋では非常に多くなっているのに対し、発展途上国では非常にまれで、それ
は我々が“超”清潔な衛生環境で生活しているのが原因であると強調されてい
ます。

 確かに、大腸などに寄生する寄生虫の駆除が進んできたせいで、寄生虫を持
っている人が非常に少なくなってきています。
 私が小学生の頃は、ギョウチュウなど寄生虫検査で陽性となる人が多くいた
ものです。

 体内に寄生虫がいると、寄生虫に対するIgEという抗体が働き、寄生虫の作
り出す物質を身体から排除しようとします。

 ところが寄生虫がいなくなるとそのようなIgEの働き場がなくなり、そのた
め本来は攻撃相手ではない自分自身をも攻撃してしまうという説や、それが引
き金となって、免疫系のバランスが崩れてしまうのがアレルギーの原因という
説もあります。

 いずれにせよ、結果として様々なアレルギー反応が出てくるようになったも
ので、この事を逆に利用し、寄生虫を人為的に宿すようにすれば異常なアレル
ギー反応も低下するはずという考えです。

 実際、この事を示す臨床成績多く発表されており、この治療法が今後盛んに
なるのではないかと予感されます。

 勿論、寄生虫自身を利用すればよいという考え方もありますが、生きた生物
を身体に取り入れるのはやはり危険です。

 寄生虫の分泌するIgE抗体を刺激する成分を取り出し、それを身体に注入す
ればよいのではないかという考え方に興味が持たれます。

 “アレルギー反応が文明国の宿命”などといっていないで、何とか早く治療
法を確立していただきたいと願っています。


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