肥満は、腸に住む細菌の種類で決まる。

●肥満は、腸に住む細菌の種類で決まる。


 肥満の原因として、新たな発見がありました。
 何と、お腹に住んでいる細菌の種類によって、肥満度が決定されるそうです。
 これは、米国ワシントン大学のMatej Bajzer博士らが見つけたもので、権威
ある科学誌として定評のあるネーチャー誌の生理学の欄に、「肥満と腸内フロ
ーラ」というタイトルで報告されたものです(Nature 444, 1009-1010 (21
December 2006); 論文タイトル:Physiology: Obesity and gut flora)。

 人間など哺乳類の腸内には千種類以上の細菌が住んでおり、食べ物を消化し
たり、また栄養物が腸管に吸収されるのを助けています。

 ヒトやマウスの腸管に住む細菌は、バクテロイデス(B:Bacteroidetes)
類かファーミキューテス(F:Firmicutes)類のいずれかのグループに属する
事が分かっています。

 そこで研究では、先ず太ったマウスとやせたマウスの腸内細菌について、B
類とF類の割合を比べました。

 すると、太ったマウスでは、F類に比べ、B類細菌が50%以下と非常に少ない
事が分かりました。
 この現象は、人の場合も同様で、太った人ほどB類が少なかったそうです。

 次に太ったマウスにカロリー制限を行い、体重を減少させたところ、B類が
増えると同時にF類が減る事が分かりました。

 さらに、細菌が全くない状態で飼育したマウスに、それぞれ太ったマウス由
来の腸内細菌を、あるいは逆に痩せたマウスの腸内細菌を与え、元々無菌状態
で育ったマウスの体重がどのようになるかを調べました。

 その結果、2週間後の体脂肪増加率を見ると、肥満マウスの腸内細菌を与えた
場合は約47%増加したのに対し、痩せたマウスの腸内細菌を与えられた場合には
約27%の増加しか見られない事が分かりました。

 以上の結果から、研究者等は、B類細菌が減ってF類細菌が腸内に増えると、
食事からのカロリー回収率が高まり、体重増につながるとしています。


 この発見は、今までの常識を打ち破る新しいもので、将来は腸内細菌の状態を
変えることで、肥満を治療できる可能性があることになります。

 すなわち、痩せ願望の方は、お腹の中にB類細菌が増えるようにするとよいの
かもしれません。
 ちなみに、お母さんのお腹にいる時は、子供は無菌状態です。
 子供の腸内細菌は、生まれてからお母さんとの密接な付き合いで、お母さんの
腸内細菌を受け取り、それが一生保たれて、その人の腸内細菌の種類が決まると
いわれています。
 即ち、お母さんが太っていると、お母さんからF型細菌をもらい、逆にお母さ
んがスリムだと、お母さんのB型細菌を多くもらい、その後もその状態が続くこ
とになります。
 ということは、大きくなってから太るのを嫌い、またお母さんがF型細菌を多
く持っている人の場合は、乳児の時に、B型細菌を持っている人と密接な付き合
いをしてもらうとよいのかもしれませんね。


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