カロリー制限食が長寿の鍵:成長ホルモンやインシュリンの効果が明ら

●カロリー制限食が長寿の鍵:成長ホルモンやインシュリンの効果が明らかに

 昔から、腹八分目或いはそれ以下の方が、健康で長生きできるとよく言われ
ます。
 実際に、今までの多くの研究でも、カロリー制限をすると動物の寿命が延び
ることが報告されています。

 しかし、その生物学的な理由については、よく分かっていませんでした。
 ところが最近の研究によると、成長ホルモンやインシュリンが、カロリー制
限した際に長寿にさせるキーとなる因子であることが明らかとなりましたので、
お知らせします。

 これは、南イリノイ大学のAndrezej Bartke博士らが、権威ある全米科学ア
カデミー紀要誌(PNAS, 2006, 5月16日号; Proceedings of the National
Academy of Sciences, vol. 103, no. 20, 7901-7905)に発表されたもので、
製薬業界をはじめとした様々な業界から注目を集めています。

 研究では先ず、正常なマウスにカロリー制限食を与えると、実際に長生きす
るかを調べました。
 その結果によると、雄の正常マウスではカロリー制限食で19%、雌の正常
マウスでは実に28%も生存期間が伸びたそうです。

 次にカロリー制限食にした際、成長ホルモンやインシュリンに、長寿をもた
らす効果があるかを調べるため、成長ホルモンを欠損したマウスを用いて研究
しました。
 この遺伝子欠損マウスは、成長ホルモンに対する受容体を作ることができず、
成長ホルモンに非感受性(耐性。成長ホルモンの影響を受けない)となった変
異マウスです。
 この変異マウスにカロリー制限を行ったところ、正常マウスでは長寿になっ
たのに対して、変異マウスではそのような効果は全く現れなかったそうです。
 また、正常マウスにカロリー制限食を与えた場合は、インシュリン感受性が
高まるのに対し、変異マウスではインシュリン感受性も高まらないことも確認
されました。
 即ち、正常マウスはカロリー制限の効果が出て、インシュリン感受性が高ま
り、その結果長生きできるようになるのに対し、成長ホルモンに非感受性の変
異マウスはインシュリン感受性は高まらず、カロリー制限食をしても長生きで
きるようにはならなかった訳です。

 これらの結果から、成長ホルモンの受容体の作用で連動する様々な生理活動
が、老化の抑制や長寿に重要なことが示唆されます。
 そして、インシュリンの作用を高めることは、老化を抑制して長寿とするの
に重要であり、それにはカロリー制限食が効果があると結論できます。

 ところで、この研究から成長ホルモンやインシュリンのシグナル伝達過程が、
抗老化薬の開発のターゲットとなる事が考えられますので、それを用いて夢の
抗老化薬を開発しようと、製薬企業は注目しているようです。
 即ち、適切な抗肥満薬を開発すれば、長寿の薬にもなりうるという訳で、大
ヒットが間違いない薬が出来るかも知れないというのです。

 製薬企業がもくろむ様な、健康な人に抗肥満薬をのんでもらうというのは論
外だと思いますが、確かに、インシュリン感受性を高める様な治療法は、老化
に関連した疾病のリスクを下げたり、老化自身を遅らせるに有効であると思わ
れます。

 即ち、薬に頼らなくても、腹八分目の食事をすれば、長寿も期待できると言
うことではないでしょうか?

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