大腸癌:欧米食が悪いわけでもないし、野菜を食べても予防できるわけ

●大腸癌:欧米食が悪いわけでもないし、野菜を食べても予防できるわけでも
ない?

 最近国内で大腸癌になる人が増えてきており、これによる死者は2003年には
全国で約3万9、000人で、死亡率は最近50年で約2.3倍に増えていま
す。
 その理由として、肉や脂肪を多く食べる「欧米型」の食事が関係している
といわれており、また野菜や果物を食べると大腸癌になりにくいとされていま
す。
 ところが、最近国内で行われた大規模調査の結果によると、そのような事は
見られず、大腸癌の発生とは特に関係がなさそうとのことで、各界に大反響を
巻き起こしています。そこで今日は、その話題をお送りします。

① 大腸癌:肉や脂肪を多く摂る欧米化食とは、関係がない。
 これは、厚生労働省研究班(担当研究者:金美環・元国立がんセンター金美
環氏)が発表したものです。
 研究では、先ず1990年に、岩手、秋田、長野、及び沖縄の40歳〜59歳の男女
計4万2,112人を対象に、飲食物44品目についての摂取頻度を調べました。
 そしてその後、10年間にわたって、これらの人が実際に大腸がんにかかった
かどうかを調査したそうです。
 肉やバターなどを摂る量により4つのグループに分けて、大腸癌になる頻度
に差があるかを調べたところ、男性の場合ではいずれもグループでも差は見ら
れませんでした。
 また女性の場合では、肉類などを最も多く食べるグループでは、最も少ない
グループに比べて、結腸がんにかかる率が2.2倍高くなっていましたが、大腸組
織全体でみるとやはり統計的にみると差はみられなかったということです。
 漬物やタラコ、干し魚、みそ汁などでも、同様に男性では差がなく、女性で
多く食べる群では結腸がんになる率が2.1倍に高まっていましたが、大腸全体の
癌の発生頻度では有意な差は見られなかったという事です。
 特に男性で差が出なかったのは、食事よりも飲酒や喫煙の影響が大きい可能
性があるということです。

②大腸癌の予防には、野菜や果物を多く食べてもあまり効果がない。
 これも、①と同じ厚生労働省の研究班の坪野吉孝・東北大教授が発表したも
のです。
 全国の40〜69歳の男女約9万人を対象にして、食事や喫煙などの生活習慣に関
して調査し、1990年から10年間にわたって追跡しました。ちなみにこの間に、
705人が大腸がんにかかったそうです。
 この人々を野菜や果物の摂取量別に4つのグループにわけ、大腸がんの発生率
と比較しました。
 その結果、野菜あるいは果物でも、最もよく食べるグループと最も少ないグル
ープとの間で、大腸がんの発生率に差はないことが明らかになりました。また、
大腸がんを更に細かく結腸がんと直腸がんに分けても差はなかったそうです。
 この研究班は以前、胃がんについては野菜や果物の予防効果がある事を確認し
ていますが、大腸癌では予想外の結果だったようです。

 このように今回の2つの報告はいずれも予想とは異なる結果だったわけですが、
専門家によると、今回の調査は90年代のものであり、大腸がんの少なかった昔
と比べて、既にすべての人の食事が欧米化しており、差が出にくかったのでは、
とされています。

 しかし、たとえ大腸癌の発生には差は見られないとしても、野菜や果物の摂取
が大切であることに変わりはないとのことですので、やはり野菜や果物を多く、
そしてあまり脂肪分の高い食事にはお気をつけ下さいませ。

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