何故、心臓は左?:生物の非対称性が解明。

● 何故、心臓は左?:生物の非対称性が解明。

 昔から、心臓が左に、肝臓が右にどうしてあるのか疑問でしたが、つい最近
その謎を解き明かす事に成功したという話題です。

 これは、東京大学廣川信隆教授らが明らかにしたもので、英国の権威ある科
学誌ネイチャー(Nature, vol. 435, no. 7039, 2005 172)に報告されてい
ます(論文タイトル:FGF-induced vesicular release of Sonic hedgehog
and retinoic acid in leftward nodal flow is critical for left-right
determination)。

 体の左右を決定の機構として、胎児の時にできるお腹の小さなくぼみ(腹部
ノード、ventral node)の位置で、繊毛が羊水の流れる向きを決め、左に羊水
を流すことが関係するといわれています。そして、この時、細胞内の様々な情
報伝達に関係するカルシウムの濃度が体の左側で高くなり、そのために遺伝子
の働きに差を生じて、心臓などの臓器ができる位置が決まるのだそうです。

 そこで今回の研究では、この仮説を確かめ、更にどのようなタンパク質が実
際に関係しているかを、マウスを用いて調べました。

 その結果、タンパク質などが入った袋状の物質(nodal vesicular parcel,
NVP)が、くぼみ表面の細胞から分泌されることがわかりました。
 この袋の中にはソニック・ヘッジホッグというたんぱく質と、ビタミンの仲
間であるレチノイン酸が含まれているのだそうです。

 そして、この袋が羊水で流されて左方向に運ばれ、そこで袋が破れて中のた
んぱく質などが放出されて、左側の細胞表面にくっつき、それを合図にカルシ
ウム濃度が上昇するのだそうです。そしてこれが引き金となって、心臓などを
作る遺伝子の発現が位置特異的に起こり、左側にのみ心臓ができると考えられ
ています。

 今までも生物の非対称性についていろいろと議論されてきましたが、この研
究により初期の段階がほぼ解明でき、後は個々の臓器がどうできていくかの研
究を進めれば、その全容がわかると期待されています。

 私にはその細かなメカニズムはよくわかりませんが、結局は遺伝子の発現の
仕方がどうやって決まっているかに依存していることのようです。長い長い生
命の進化の過程で出来上がったものですが、それにしても生命の不思議さを感
じます。神様が、“ここがよい”と決めたのではないのは、ちょっとガッカリ
されるかもしれませんが・・・。

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 「将来を予測する最善の方法は、自ら将来を形作ることである。」
                      【ピーター・F.ドラッカー

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