日本で胃がんが多いのは、強力なピロリ菌のせい!

<日本で胃がんが多いのは、強力なピロリ菌のせい!>

 先日、がん検診に行ってきました。バリウムを飲む胃がん検診を受けたかったのですが、腸に憩室があるため断念しましたが・・・。
 さて、東アジアでは胃がん発症率が世界的にも高い事が知られています。特に日本は最多発生国で、胃がんによる死亡者は年約5万人にのぼっています。
 この胃がんは、「ヘリコバクター・ピロリ」(ピロリ菌)が胃の粘膜に感染する事が引き金となりますが、何故東アジア地域で胃がん発生率が高いかはよく分かっていませんでした。
 ところが今回、畠山昌則・東京大教授(感染腫瘍学)らの研究チームが、日本など東アジアに流行するピロリ菌の作る発がん物質が、欧米のピロリ菌よりも強い発がん性を持つ事を明らかにしました。

・論文タイトル: Differential Mechanisms for SHP2 Binding and Activation Are Exploited by Geographically Distinct Helicobacter pylori CagA Oncoproteins.
・著者: Hayashi, T. et al.
・医学誌名: Cell Reports 20(12): 2876-90 (2017)

 ピロリ菌は胃の細胞に取り付くと、針を差し込んで発がん物質「CagA」を粘膜に注入します。このCagAタンパク質は細胞増殖に関する酵素に結合し、細胞増殖を異常に活発化させるために発がんに至ることが知られていました。
 そこで研究チームはCagAと酵素の結合の仕組みを詳しく調べたところ、欧米などでのピロリ菌が出すCagAは1本の爪で酵素に結び付くタイプだったのに対し、東アジアの型は別にもう1本、爪を持っている事が分かりました。
 そのため結合力は欧米型より約100倍強くなり、この型のピロリ菌の多い東アジアでは胃がんの発症率が高いと考えられるそうです。
 そして研究者らは、「アジア型ピロリ菌の爪による結合を阻むような薬を作れば、日本人の胃がん予防や早期治療法の開発への応用が期待できる」と結論しています。

 実は私もピロリ菌感染者で、幸い抗生物質のおかげで除菌することが出来ましたが、除菌がうまくいかない人も多くいらっしゃいます。今回の研究が、更に胃がん予防の有効な手段になることを祈ります。