全国のソメイヨシノは、病気に弱い同一クローン!

<全国のソメイヨシノは、病気に弱い同一クローン!>
 
 例年よりちょっと早いような気がしますが、うれしい桜の季節がやってきました。
 そこで今日は、桜の木についてのお話です。

 クローン化生物は、同じ遺伝子からなっているために、進化的にはあまり強い生物とは言えません。全く同じ遺伝子から成る生物はある一定の環境には強くても、外界が変化した時に対応できないためです。
 一方、様々な変異を通して多様化している生物では、例えほとんどの同族が死に絶えても、環境にあった極一部の子孫がやがては繁栄して、種全体としては生き残っていきます(生物の多様性)。
 ところが今回、桜の代名詞で、間もなく開花期を迎える「ソメイヨシノ」はクローン化植物であるために病害虫に弱く、将来はソメイヨシノ以外の桜も日本中に広がるかもしれないそうです。

 日本の野生の桜は10種あるのだそうですが、京都大の研究者らが全国で採取した個体の遺伝子を調べたところ、ソメイヨシノの祖先オオシマザクラであり、全て遺伝的に同じクローンであることが分かりました。
 しかしクローンの弱点である、1つの病虫害が一気に大流行しかねない怖さがあり、実際にソメイヨシノは「てんぐ巣病」という感染症に罹りやすく、また外来種のクビアカツヤカミキリにも弱い事が知られています。即ち、これらが蔓延すれば日本中の桜が全滅する可能性もある訳です。

 そこで多様性を確保し、被害拡大を防ぐために、公益財団法人・日本花の会(東京)は長年にわたって続けてきたソメイヨシノの苗木の配布を止め、代わりに調布の神代植物公園に原木がある「神代曙(あけぼの)」と云う桜を配布しています。ちなみにこの神代曙はてんぐ巣病にかかりにくく、咲き方や時期はソメイヨシノに似て、花の色が少し濃いのが特徴だそうです。

 従って今後はソメイヨシノ以外の桜も同時に楽しむことが出来、日本の春の風景も今とは少し変わってくるかも知れないとの事です。