長時間労働する人は幸福度が高い?>

 いま国会では、働き方改革関連法案で大紛糾しています。
 残業の上限を「月100時間未満、年720時間まで」と定める罰則付き規制のほか、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の創設や裁量労働制の対象拡大が論議されています。

 ところが今回、一般的には残業時間が60時間を超えると健康リスクは高まるのにも拘わらず、労働者自身の幸福度は上昇することが分かりました。
 これはパーソル総合研究所と中原淳東京大准教授が共同で行った、残業実態調査で明らかになったものです。

 調査は昨年10月、社員10人以上の企業に勤める管理職1000人と従業員5000人の計6000人を対象にインターネットを用いたアンケートを行い、労働者の健康度や仕事から得られる幸福度について評価してもらいました(35ポイント満点)。
 その結果、残業60時間未満の人が「食欲がない」と回答したのは7.4%で、残業20〜60時間未満の人の2.3倍高く、「強いストレスを感じる」「重篤な病気・疾患がある」という回答も残業時間が長くなるほど高く、健康上のリスクが高くなっていました。
 また仕事上での幸福度については、最も高かったのは残業1〜10時間未満の労働者で18.58ポイント、最低は残業45〜60時間未満の人で16.98ポイントでした。

 ところが、残業60時間以上の人の場合では17.54ポイントと、60時間以上では一転上昇している事が分かりました。
 即ち、労働者の幸福度は残業時間が長くなると少しずつ下がって行くのですが、60時間を超えると逆に跳ね上がり、また会社への満足度や仕事への意欲も同様に60時間を超えると上がっていたそうです。

 その一方で、幸福度や満足度は高いのに、就業継続意欲は低くなるという矛盾した結果も出ていました。
即ち、残業60時間以上で「この会社にずっと勤めていたい」と回答したのは28.8%と、60時間未満の層よりも5ポイント低く、「働くこと自体をそろそろ辞めようと思う」という回答も18.6%に上っていたそうです。

 以上の結果から、この研究グループは「幸福度や満足度、意欲は高いのに、ストレスは高く、休みたい、眠りたいと感じている。意識や行動の不整合が起こっていて、正常な判断ができない状態なのではないか」と分析し、自覚症状がないまま病気や休職につながるリスクがあると考えられるそうです。

 さて皆様、この結果をどうお考えでしょうか?  労働時間が短く、仕事の幸福度も高い労働とは・・・。 なかなか難しい問題のようにも思えます・・・。