胎児DNAが妊婦の喫煙で変異する

<胎児DNAが妊婦の喫煙で変異する>

 最近、男性の喫煙率が低下していますが、未だに妊婦さんで喫煙している方も大勢いらっしゃいます。
 そこで今日は妊婦さんの喫煙が胎児に影響するという話題です。
 妊婦さんの喫煙が、発育中の胎児のDNAに科学的な変化を生させ、子どもを危険にさらすというもので、米科学誌アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)に報告されたものです。

・論文タイトル:DNA Methylation in Newborns and Maternal Smoking in Pregnancy: Genome-wide Consortium Meta-analysis
・著者: Bonnie R. Joubert,他
科学誌名: The American Journal of Human Genetics, Vol. 98, Issue 4, p680–696 Published online: March 31, 2016 DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.ajhg.2016.02.019

 研究は、喫煙による胎児のDNAの変化がどのような仕組みで起きるのかを調べるため、前に研究13件のメタ分析を行いました。
 なお、メタ分析の対象となった新生児6685人のうちの約13%は、妊娠中に日常的に喫煙していた母親から生まれた子どもで、さらに妊娠中に時折喫煙していたか、妊娠初期に禁煙していた母親を持つ子どもは同25%でした。
 その結果、日常的な喫煙者のグループの場合、胎児DNAが化学的に変化した箇所が6073箇所もあり、いずれも非喫煙者の母親を持つ新生児のDNAと異なっていることがわかりました。
 そして、これらの変化の多くは発生経路に関係した、肺や神経系の発達、がん、口唇裂や口蓋裂などの出生異常などに関連する遺伝子で変化が認められたという事です。
 また、これらのDNAの変化は出産後に採取された臍(さい)帯血でも確認され、母親が妊娠中に喫煙した頻度が低いほど、この変化がより少ない事がわかりました。
 更に、妊娠中に喫煙していた母親を持つ、より年長の(平均年齢6歳の)子どもでも、DNAの変化が明確に残っていることが、別の分析で明らかになったそうです。

 以上のように、妊婦さんの喫煙について、死産、新生児の先天的口蓋裂、肺病、神経行動学的な問題などの原因となる恐れがあり、妊娠中の喫煙を避けるよう警告されています。
 妊婦さんは自分自身の喫煙は勿論、受動喫煙にもご注意ください。