記念の写真はその思い出を弱める

<記念の写真はその思い出を弱める>


旅行や楽しい時間の思い出に記念写真を撮りますが、実は逆効果になって、そのこと自体を忘れやすくなるそうです。
これは、米国心理学専門誌「サイコロジカル・サイエンス(Psychological Science)」に発表された研究結果です。


論文タイトル: Point-and-Shoot Memories: The Influence of Taking Photos on Memory for a Museum Tour
著者: Linda A. Henkel
専門誌名: Psychological Science, 0956797613504438, published on December 5, 2013


研究では、米フェアフィールド大学(Fairfield University)のボランティア学生を博物館のツアーに参加させ、写真を撮るか、或いは単に見学するだけかを選んでもらったうえで、展示内容を覚えるようにしてもらいました。

そして翌日、指定した展示品に関する記憶を調べたところ、写真を撮影していた学生では見学だけしていた学生に比べて、展示対象物に関する認識に正確さを欠いており、記憶もあまりなされていないことが分かりました。

論文の著者であるLinda Henkel氏によると、「人々は何かというとすぐにカメラを取り出しては、ほとんど何も考えずにシャッターを切っているが、実際は目の前で起きていることをキチンと捉え損じている」と述べています。
そしてこの現象を「写真撮影減殺効果」と名付け、「機械に頼り、カメラにその内容を記録させることで、結局のところは自分自身で積極的にその出来事に参加しなくなってしまう。」ためとしています。

またこの実験では、同時に面白い発見もあったそうです。
カメラ撮影した学生のうち、被写体の特定の部分をズームして撮影した学生は、拡大した部分だけではなく、外側の写真に収まらない部分についての記憶もよく残っていました。

これらの結果から、「『心の眼』と『カメラの眼』が同じではなく、写真は何かを記憶する助けにはなるが、それはじっくり時間をかけて鑑賞したり見直した場合のみで、写真を過剰に撮影すると鑑賞がおろそかになる」と指摘しています。
そして、「写真を撮って個人の思い出にするには、後で撮った写真を眼にする機会をじっくりと持つ必要がある」と述べています。