大豆の成分が、前立腺がんを抑制する。

<大豆の成分が、前立腺がんを抑制する。>


節分の豆まきにちなんで、大豆のお話です。

高齢化社会の到来に伴って、男性の前立腺がんが世界的な大問題となってきています。

今回、大豆に含まれる成分がほぼ完全に、マウスに移植したヒト前立腺がんの転移を抑制するというニュースがありましたので、お知らせします。

これは、ノースウエスト大学Robert H. LurieがんセンターのRaymond C. Bergan博士らが、米国癌学会誌(Cancer Research, 2008, March 15 issue)に報告したものです。

今までも、疫学調査や観察研究などで、大豆を多く摂る男性は前立腺がんの転移率や死亡率が低い事が報告されていました。

また、大豆に含まれる抗酸化物質であるゲニスチンが、癌を引き起こすチロシンキナーゼなどの細胞内分子の活性を阻害することが知られていました。

更に、ゲニスチンにはがん細胞の接着性を弱めるP38MAPキナーゼの活性を阻害作用があることから、がん細胞の転移や細胞浸潤も抑制しうると考えられていました。

そこでこの研究者らは、マウスに悪性ヒト前立腺がんを移植する実験を利用して、前もってゲニスチンを経口投与しておいた場合の癌転移に対する効果を調べました。

その結果、ゲニスチンを投与しておいた場合に限り、がん細胞が肺転移する頻度を96%低下させることが明らかになりました。
腫瘍のサイズを減少させることはなかったようですが、癌移植部からの肺転移をほぼ完全に抑えたというわけです。

ちなみに、この時のマウス血液中のゲニスチン量は、ヒトが通常の大豆食をとった際の血液濃度とほぼ同じであったことから、人にも適応できると考えられています。

更にマウスの癌組織を解析したところ、がん細胞同士が強く結合しており、細胞吸着性が強まっていることが確認できたそうです。

またゲニスチンを投与されたマウスでは、癌転移に関係した遺伝子の発現レベルが低下していることも明らかになりました。

以上の結果から、ゲニスチンは前立腺癌の転移をほぼ完全に抑制し得ると結論されています。

また、この研究者によると、単に精製したゲニスチンのみを摂るよりも、大豆にはその他にも様々な有用成分が含まれているので、大豆そのものを摂るようにした方がよいのではないかと述べています。


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