葉酸:結腸直腸腺腫の予防効果なし。逆にリスクが増加?

葉酸:結腸直腸腺腫の予防効果なし。逆にリスクが増加?>


 葉酸は、ビタミンB群の一種で、特に妊娠中の女性にとって重要なビタミンです。
 健康な赤ちゃんに恵まれるためにも、是非摂っていただきたいものなので、このHPでも何度か取り上げました。
 また、葉酸は妊婦さんにとってだけでなく、一般の人についても重要なビタミンです。

 ところが、最近の研究によると、葉酸は大腸がんの元である結腸直腸腺腫に対しては予防効果がないばかりか、逆に腫瘍の発生の危険性を高めるとの報告がありました。
 気になる報告でしたので、取り上げてみました。

 この報告を行ったのは、米国ダートマス・ヒチコック医療センターのBernard F. Cole氏らで、葉酸を摂取しても結腸直腸腺腫のリスクは減少せず、逆にそのリスクが増大する可能性を指摘しています。

 この報告は、JAMA誌2007年6月6日号に発表されたものです(Cole BF et al. Folic Acid for the Prevention of Colorectal Adenomas, A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2007 Jun 6; 297(21): 2351-9.)。

 研究は、1994年7月から2004年10月の間に、ダートマス・ヒチコック医療センターなど米国とカナダの9施設で行われたもので、結腸直腸腺腫の病歴のある男女1,021人が参加しました。

 このうち516人に1mg/日の葉酸摂取してもらい、プラセボ群との結腸直腸腺腫の発生率を調べました。

 その結果、結腸直腸腺腫の発生率では、葉酸摂取群が44.1%だったのに対し、プラセボ群では42.4%でした。
 また進行性病変の発生率も、葉酸摂取群が11.4%、プラセボ群が8.6%とほとんど差が見られず、逆に発生率が高くなっていることがわかりました。

 次に、1 cm以上または浸潤性の癌、あるいは多発性腺腫の発生率を比較しました。
 すると、1つ以上の結腸直腸腺腫の発生率は、葉酸摂取群が41.9%、プラセボ群が37.2%と、そのリスクが高くなっていることがわかりました。
 また、進行病変の発生率も、葉酸摂取群が11.6%、プラセボ群が6.9%となっており、さらに葉酸摂取群では、3つ以上の腺腫のリスクも高くなっていたそうです。

 以上の結果から、葉酸サプリメントを摂取しても、結腸直腸腺腫の予防に効果がなく、逆にそのリスクが増大する可能性があると述べられています。


 さて、この報告では、葉酸を摂っても大腸がんの元となる腫瘍発生が抑えられないとしていますが、だからといって葉酸を取るべきではない、といっている訳ではありません。

 葉酸の栄養所要量は、200μg〜240μgで上限量が1,000μg(成人男女)とされています。
 また、妊娠期および授乳期にはさらに多めに摂り、一日あたり400μg の摂取が望ましいとされています。
 しかし、過剰摂取は問題が生じる可能性がありますので、適正な量を摂られますよう。


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