本当に、抗酸化サプリを摂ると死亡率が上昇する?

●本当に、抗酸化サプリを摂ると死亡率が上昇する?


 「抗酸化物質入りサプリの一部、死亡率上昇 23万人調査」(2007年3月1日
付け朝日新聞)のニュースが報道されて以来、健康食品産業界のみならず、一
般の人も巻き込んで大問題となりました。
 実は私も朝日新聞の購読者なのですが、直ぐに大元の米医師会誌JAMA(Journal
of the American MedicalAssociation)を取り寄せたほどでした。

 あれからほぼ1年たって、ようやくこの問題に対しても冷静な判断、見解を発
表できるようになって来ましたので、この問題を見直してみました。

 まずは、当時の朝日新聞の記事を以下に示します。
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1)朝日新聞の記事
 生活習慣病の予防などに効果があるとされる抗酸化物質が入ったサプリメント
(補助栄養剤)を摂取すると、種類によって寿命が縮まるかもしれない。デンマ
ーク・コペンハーゲン大などのグループが、28日付の米医師会誌で過去の試験
を分析した結果を発表した。 同グループは、サプリメントの効果に関する臨床
試験から68件の報告を無作為に抽出。ビタミンA、同C、同Eとベータカロテン、
セレンの計五つの抗酸化物質を含む様々なサプリメントについて、摂取の有無と
死亡率との関係を調べた。
 その結果、ビタミンA、同E、ベータカロテンを摂取していた人は、摂取して
いない人と比べ死亡率が約5%高かった。一方、ビタミンCとセレンについては
死亡率との因果関係はみられなかったという。
 抗酸化物質は野菜や果物など天然食品にも含まれるが、調査は人工合成された
サプリメントの効果のみを対象にした。被験者は計約23万2600人。
 抗酸化物質は体内で活性酸素の働きを抑え、動脈硬化など生活習慣病の予防に
効果があるとされる。
 今回の調査で、因果関係が明確になったわけではない。ただ、同グループは
活性酸素の減少が生体防御の仕組みに影響を与えたのではないか」などとみて
いる。
 同グループによると、抗酸化物質入りのサプリメントを使っている人は欧州と
北米だけで8000万〜1億6000万人に上る。
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 以上の様に、衝撃的な内容です。

 さて、この朝日の記事は、米医師会誌の論文を元に書いた情報提供会社の要約
記事を参考にしたと思われるのですが、その要約記事には朝日新聞が書かなかっ
た内容も指摘されています。

 そこで、その要約記事の内容の一部を以下に示します(HealthDayNews;Some
Antioxidant Supplements May Raise Death Risk)

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2)HealthDayNewsの要約(最初の部分は朝日の記事と同様)
 しかし、今回の研究に対し、いくつかの問題点が指摘されている。
 米タフツ大学抗酸化研究室長のJeffrey Blumberg氏は、今回の研究に用いら
れた手法を疑問視。
 こうしたメタ分析をする際の重要な前提条件は、対象を同じレベル下に置く
ことだが、研究には、一次予防や治療に関するものが含まれ、また、高齢者、
若年者、喫煙者、非喫煙者などが混在していると指摘する。
 サプリメント業界を代表する産業団体のAndrew Shao氏も「研究期間が1日
限りのものや数年にわたるものがあり、また研究対象が患者と一般消費者と
異なっている。
 治療としての研究と一般消費者の健康維持が目的とした研究には大きな違
いがあ
る」と述べている。
 Blumberg 氏は「抗酸化サプリメントは多くの研究で、副作用はないと認め
られている。ただし、毒性はないものの、心疾患や癌(がん)を予防すること
については疑問が残されている」としている。
 また、米国心臓協会(AHA)、米国癌協会(ACS)ともに、抗酸化サプリメ
ントの効果を決定づける根拠はないとし、両協会とも果物や野菜から抗酸化
物質を摂取することを推奨している。
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 1)の朝日の記事とともに、2)を読めば、本当に著者の言いたかったこと
が明らかになりませんか。
 もちろん、朝日の記事にも“今回の調査で因果関係が明確になったわけでは
ない”と一言あります。
 しかし、朝日新聞の記事を読んだだけでは“抗酸化サプリメントを摂取=死
亡率上昇”と読み取れ、センセーショナルな面だけを取り上げるいつものやり
方が見え隠れします。
 また、研究データの中に慢性疾患を持つ患者さんや病気を発症している人も
含まれおり、またサプリメントの摂取も通常量を遥かに超えたものだったらし
く、データの取り方が問題視されているようです。

 今後さらに詳しい研究が必要なのは云うまでもありませんが、特にこれらの
サプリメントが抗老化作用を持ち、アンチエージングの切り札であるだけに、
慎重かつ詳細な研究結果が待たれます。


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