低脂肪食を心がけても、癌になりにくくなるわけではない。

● 低脂肪食を心がけても、癌になりにくくなるわけではない。


 脂肪を多く食べると、高脂血症となり、心疾患などのリスクが高まり、同時
に大腸癌などにもなりやすいとされています。
 
 とすると、逆に低脂肪食を心がけると、癌になりにくくなることが期待でき
ます。
 ところが、実際は、低脂肪食を摂ったからといって、循環器系の疾病やがん
が起こりにくくなるわけではないという報告です。

 これは約5万人について、平均8.1年追跡した大規模な米国の調査の結果
で、全米医師会雑誌のJAMA誌(JAMA, 2006, Feb. 8th)に報告されたものです。

 4万8835人の閉経後女性(50〜79歳)について、低脂肪食を多く摂
り、また野菜・果物・穀物の摂取も多い食事を行う群(1万9541人)と、
そのような制限食をしなかった2万9294人の対照群に分け、がんに罹る頻
度を比較しました。

 その結果、食事制限群では655人(3.35%)が乳癌になったのに対し、
対照群では1072人(3.66%)の女性が、追跡期間中(平均追跡期間
8.1年)に乳がんになったそうです。
 即ち、低脂肪食によって乳がんのリスクは特に低下しないことになります。

 また、結腸直腸がんについても、食事制限群で201人(0.13%)であ
ったのに対し、対照群で279人(0.12%)が罹患しており、結腸直腸が
んのリスクについても特に低くなってはいませんでした。

 この結果から、低脂肪食だからといって、乳がんや結腸直腸がんのリスクは
低下しないとされています。

 また、循環器系疾患についても同じ結果で、食事制限群における年間発生率
は、冠動脈疾患1000(0.63%)、脳卒中434(0.28%)、循環
器系疾患(冠動脈疾患と脳卒中)1357(0.86%)だったのに対し、対
照群はそれぞれ1549(0.65%)、642(0.27%)、2088
(0.88%)で、この結果も特に心疾患のリスク低下に役立つとは思えない
ということです。

 やや残念な結果ですね。


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