朝鮮人参: がん患者さんの倦怠感解消に効果。

朝鮮人参: がん患者さんの倦怠感解消に効果。


「だるい。体が重い。」といった倦怠感は、がん患者さんが訴える症状のトッ
プです。
調査によると、倦怠感を訴えるがん患者さんは58%に上っており、これは疼痛
(22%)や悪心・嘔吐(18%)を訴える患者の倍以上であることが知られていま
す。

さて、このような倦怠感を解消させるものとして、朝鮮人参が有効であること
が明らかになりましたので、お知らせします。

これは、第43回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次会議(American Society of Clinical
Oncology 43rd Annual Meeting: Abstracts 9001, 9003, and 9004. Presented
June 3, 2007.)で報告されたもので、市販薬よりも有望な結果が得られたよう
たようです。

この報告は、メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)の腫瘍科准教
授であるDebra Barton博士が行ったものです。
試験は、推定余命が6カ月以上のさまざまな種類の癌患者さん282例を対象にし
たもので、3段階のニンジン用量(750mg、1,000mg、2,000mg)を服用してもら
い、対照のプラセボと比較したものです。
これらの患者さんの約半数が化学療法を受けていたそうです。
そして、ニンジンを服用後8週間の時点で聞き取り調査を行い、簡易倦怠感質
問表(Brief Fatigue Inventory: BFI)と生活の質質問表SF-36の活動性下位尺
度について、差が見られるかどうかを調べました。

その結果、ニンジン用量が高い2群ではこれらの尺度がプラセボ群よりも優れ
ており、「やや良くなった」と「とても良くなった」と報告した患者の割合は、
ニンジン1,000mg群では25%、2,000mg群では27%に上っていることがわかりまし
た。 ちなみに、プラセボ群と750mg群ではともに10%しかなかったそうです。

以上の結果から、Barton博士は結論として「高用量でなんらかの作用があるよ
うだ」と述べ、「非常に有望」なものだとしています。

また重要な点として、副作用の報告率と副作用による脱落数は試験した群の間
で差がなかったことから、ニンジンはがん患者さんにも優しく、服用を続ける
ことのできるものであるとしています。

ニンジンは我々の眼にするもっとも一般的なサプリメントのひとつです。
特に、漢方医学では使用の長い歴史があり、「強壮薬」として、体力を高め、
ストレスに打ち勝つ効果が知られているだけに、心強い結果です。

なお、この会では他に、ドネペジル(商品名アリセプト)処方薬についても、
倦怠感に対する効果が報告されていましたが、その結果は否定的だったよう
です。
アンダーソン癌センター(テキサス州ヒューストン)のEduardo Bruera博士
が報告したものです。
研究では、癌患者さん142例を対象にして、ドネペジルの用量を1日5mgとし、
1週間後に評価を行ったところ、ドネペジル服用群とプラセボ対照試験では差
が見られなかったそうです。

がん患者さんは、ただでさえ倦怠感が強く、さらにさまざまな化学療法剤や
放射線治療などでますます激しい倦怠感にさいなまれておられます。
対症薬でしかないかもしれませんが、気力・体力を補う上でも、このようなサ
プリメントをうまく取り入れる必要を感じます。

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