タミフルと異常行動: 疑惑や因果関係など混沌とした状況!

タミフルと異常行動: 疑惑や因果関係など混沌とした状況!


 インフルエンザのシーズンがようやく終わりに近づいたかと思っていたら、
ここにきて再びインフルエンザの特効薬であるタミフルを飲んだ青少年が異常
行動を起こすのではないかと、大問題になっています。

 また、ごく最近発刊された、週刊朝日の増大号には、タミフルをめぐっての
製薬企業と研究者の癒着がスクープされており、読んで怒りを覚えた方も多い
とおもいます。
まだの人はぜひ、「スクープ!タミフル異常死と「疑惑のカネ」(週刊朝日
2007年3月23日増大号) インフルエンザの「特効薬」タミフルと相次ぐ少年
少女の転落死。 その因果関係を調査する研究者に、製薬会社から「資金」が
渡されていた。 タミフルをめぐる「疑惑のカネ」を徹底スクープ!」をご覧
ください。

 そこで、今日はこの数日に新聞などで報道されているタミフルに関する情報
をまとめてみました。


1)<タミフル中外製薬厚労省班長の講座に毎年150万円
(3月13日 毎日新聞
 インフルエンザ治療薬の「タミフル」(一般名オセルタミビル)の副作用に
ついて研究する厚生労働省研究班班長の横田俊平・横浜市立大教授(小児科)の
講座に、タミフルの輸入販売元の中外製薬からここ数年、平均150万円程度の
資金が同大学を通じて渡っていたことが、12日分かった。
 横田教授によると、小児科の講座は「奨学寄付金」という名目で毎年、製薬会
社約10社から、年間合計600万〜1200万円程度の研究費を受けている。
 これらの寄付金は、まとめて大学当局が管理しており、中外製薬からの資金は
その一部にあたるという。
 中外製薬からの寄付金は、01年度からの6年間では計約900万円。最も額
が多かったのは01年度の250万円で、この年の総額580万円の4割以上を
占めた。06年度は、総額1180万円のうち150万円。05年度は0だった。
他の寄付金と同様に、大学の規定に従い、研究用試薬や図書資料、若手医師の学
会出張の費用などに使っているという。
 研究班は昨年、タミフルの服用と、おびえや幻覚などの「異常言動」について
「統計的に明らかな関連は認められなかったが、明確な結論には今後の検討が必
要だ」とする報告書を公表。この冬も調査を続けている。
 横田教授は毎日新聞の取材に対し「多数の製薬会社から資金を受けており、ど
こからもらっているかは意識していない。資金をもらっているからといって、研
究結果をゆがめることはない。班員には他大学の人も多く、班長の独断で中外製
薬に有利な結果を出すことはできない。厚労省からも事情を聴かれたが、特に注
意は受けなかった」と話している。
 厚労省安全対策課は「事実関係を把握したうえで問題があるのかどうかを考え
たい」としている。


2)タミフルと異常行動 厚労省、因果関係の否定を撤回 見解転換も 
 (3月23日産経新聞
 インフルエンザ治療薬「タミフル」服用後の異常行動について、厚生労働省
22日、これまで「否定的」としていた服用との因果関係についての見解を事実
上白紙撤回した。辻哲夫事務次官は、死亡には至らなかった転落事例などの把握
や分析が不十分だったことを認め、徹底調査を表明するとともに、「今後の見解
が変わる可能性がある。新たに判断し直す」と述べ、方針を転換させた。
 厚労省は、昨年10月に公表された同省の研究班(主任研究者、横田俊平・横
浜市立大教授)による子供の患者約2800人を対象とした調査結果などを基に、
「服用と異常行動の関連性は否定的」としてきた。
 しかし、厚労省が注意喚起した先月28日以降も今月20日に12歳の男児
転落事故が判明したことを受け、厚労省はその事実を公表するとともに、10代
への処方を原則中止し、添付文書を改訂するよう輸入販売元の中外製薬(東京)
に要請。さらに21日になって、タミフル服用後の10代の転落事故が平成16
年以降に計15件起きていたことを公表した。
 辻事務次官は22日の会見で、異常行動事例の調査について「死亡事例を優先
してチェックしていたため、他の事例は十分な分析ができていなかった」と釈明。
死亡に至らなかった事例の内容について、十分な認識がなかったことを明かした。
 中外製薬薬事法に基づき、タミフル服用後の事故などの有害事象を、医薬品
を審査する医薬品医療機器総合機構(東京)と厚労省に報告。厚労省には平成1
3年2月のタミフル発売開始以来、約1800件の副作用情報が報告されていた。
 同省は、タミフルの精神・神経症状の副作用についてすべて調査し、4月初め
にも開く薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会に報告し、専門家の意見を
聞くことにしている。調査結果は積極的に公表する方針。
 同省研究班は調査対象を1万人に拡大して詳細な調査を実施中で、夏にも結果
をまとめる予定だ。
 昨年11月に厚労省タミフルの安全対策を訴える要望書を出した「薬害タミ
フル脳症被害者の会」の軒端晴彦代表は「あの時、適切な対応をしていれば、そ
の後の事故を防げたはず」と怒りをあらわにし、「厚労省は(把握した)事実を
隠したのではないか」と疑問を投げかけた。


3)タミフルと転落の因果関係、厚労省「否定的」を撤回(3月23日読売新聞)
 インフルエンザ治療薬「タミフル」を巡る問題で、厚生労働省の辻哲夫次官は
22日の定例記者会見で、タミフル服用と異常行動の因果関係について「これまで
『否定的』という見解をとってきたが、虚心に検討する。今後、判断も変わりうる」
と述べ、従来の見解を事実上撤回した。
 また、服用後に異常行動をとりながら死亡に至らなかった負傷事例を分析してい
なかったことも明らかにした。
 同省によると、転落・飛び降りなどの異常行動による負傷事例は、未成年11件、
成年4件。これ以外の死亡事例8件は専門家が分析を加えるなどしていたが、負傷
事例は副作用が疑われる情報の一覧表に担当者が目を通す程度だったという。医療
機関から今月19日の飛び降りが20日に報告された際、過去の事例を洗い直すま
で、同省安全対策課では負傷事例が15件に上ることも把握していなかった。


4)寄付受けた教授は除外、タミフル研究班員を入れ替えへ
(3月23日 読売新聞)
 インフルエンザ治療薬「タミフル」を巡る問題で、柳沢厚生労働相は23日、タ
ミフルの輸入・販売元「中外製薬」から寄付金を受けていた研究者について、異常
行動との因果関係などを調べる厚労省研究班から除外する方針を、衆院厚生労働委
員会で明らかにした。
 厚労省では事実関係を調査した上で、研究班のメンバーを入れ替える方針。
 研究班では、主任研究者の横田俊平・横浜市立大教授(小児科)らが、主宰する
大学の講座(研究部門)あてに中外製薬から奨学寄付金を受けていた。
 柳沢厚労相は、「(寄付を受けていた研究者については)当然、除外して、新し
い体制の機関にして、いささかも公正性を疑われることのない体制を構築する」と
答弁した。


5)インフルエンザ14歳男子、タミフル服用せず飛び降り
(3月23日読売新聞)
 西日本で先週末、インフルエンザにかかった男子(14)が、自宅2階から飛び
降り、足を骨折していたことがわかった。タミフルは服用していなかった。
 主治医によると、この男子は15日、38度の熱があり、翌日いったん熱が下が
ったものの、17日未明に自宅2階から飛び降りたとみられ、玄関先で倒れている
ところを発見された。
 病院搬送時に熱があり、検査でB型インフルエンザに感染していたことがわかっ
た。
男子は「夢の中で何かに追われ、飛び降りた」と話しているという。
 タミフル服用後の「飛び降り」事例が相次ぎ、薬との因果関係が疑われているが、
服用していない患者の飛び降り例はこれまであまり報告がないという。このケース
は来月、厚労省研究班会議で報告される予定。


6) タミフル 10歳未満も異常行動 精神、神経症状23件
(3月24日 産経新聞)
 インフルエンザ治療薬「タミフル」を服用した10代の男女が転落などの異常行
動で死亡するケースが相次いでいる問題で、10歳未満でも服用後に異常行動を含
む精神、神経症状を起こしたとの報告が平成16年4月から17年末までの約2年
間に計23件あることが24日、分かった。このうち転落事例はない。
 タミフルとの因果関係は不明で、厚生労働省が調査を急いでいる。同様の症状は
インフルエンザ自体によっても起きるとされているが、10歳以上の異常行動死が
注目される中、10歳未満についても注意を徹底する必要が出てきた。
 タミフル販売元の中外製薬から厚労省が所管する独立行政法人「医薬品医療機器
総合機構」(東京)への報告によると、タミフルを服用した10歳未満の精神、神
経症状が16年4月以降の1年間に9件、17年4月から年末までに14件あった。
死亡例の報告はなかった。
 男女別では不明1件を除き、男児が14件、女児が8件。具体的には「幻視」「
譫妄(せんもう)(精神的興奮を伴う意識の混濁)」「幻覚」「意識レベルの低下」
「けいれん」などで、うち17年には異常行動の報告が2件あった。
 10歳未満での異常行動を含む精神、神経症状について、厚労省は「ほかの(10
代などの)報告と同様にあらためて詳しく調べる。タミフルを処方するかどうかは
慎重に判断するとともに、処方された子供を2日間は1人だけで放置しないよう注
意してほしい」と強調する。
 また、中外製薬は「厚労省の調査に全面的に協力し、今後も広く情報収集に努め
たい」としている。


 以上、さまざまな問題が浮かび上がってきています。
 今年のインフルエンザのシーズンは終わりに近づいているとはいえ、来年に向け
て十分な情報開示と議論が必要です。


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