食欲促進遺伝子から、食欲をなくさせるホルモンができる!

● 食欲促進遺伝子から、食欲をなくさせるホルモンができる!

 肥満は世界中で大問題になってきていますが、この肥満の元になる食欲をな
くさせるホルモンが発見されました。将来は新しいタイプの抗肥満薬になる可
能性があると話題になっています。

 これは、米国スタンフォード大のチームがラットの胃から発見したもので、
「オブスタチン」と名付け、権威ある米科学誌サイエンス(Science, Nov. 11)
に報告されています。

 この研究者らは、以前日本の研究者により発見された食欲促進ホルモン「グ
レリン」について研究をしていました。このグレリンは、成長ホルモン分泌促
進物質受容体(GHSR)の内因性リガンドで、食欲を促進すると考えられている
ペプチドホルモンです。

 ところが研究者等が、グレリン遺伝子やグレリンのもとになる前駆体のアミ
ノ酸配列を、人間やマウスなど約10の哺乳類について調べていたところ、食
欲をおこす筈のグレリンとは別のタンパク質がつくられている可能性が高いと
考えました。

 そして実際にラットの胃からオブスタチン(obestastin)を発見したのです
が、非常に面白いことにこのオブスタチンは、グレリンとは逆に食欲を抑える
事が分かりました。

 ラットを用いてオブスタチンの作用を調べたところ、食物摂取、胃内容物の
排出、空腸の運動をすべて抑制、結果的に体重増加を防ぐことが明らかになっ
たのです。
 ちなみに、オブスタチンobestatinの名前は、ラテン語の「obedere(むさぼ
り食う)」と、「statin(抑制する)」をあわせてと名付けられたのだそうで
す。

 グレリン自体は食欲を促進するホルモンであるのに対し、オブスタチンは遺
伝子が共通なのに、機能はほぼ正反対というわけです。こうした例は非常に珍
しく、分子生物学の新発見ですが、同時に将来の肥満を抑える特効薬の期待が
高まっているという事です。


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 今日の話題は如何でしたか?

 ・既刊号は、ホームページ「http://www.drhase.info」をご覧下さい。

 ・メールマガジンをお届けしています。ご希望の方は、上記ホームページよ
  り登録なさってください。

 ・また、情報交換の場として、「http://d.hatena.ne.jp/Drhase/」のコメ
  ントコーナーもご覧下さい。