プラセボ:偽の薬でも、実際に脳内に鎮痛成分が放出される

プラセボ:偽の薬でも、実際に脳内に鎮痛成分が放出される

 プラセボ効果とは、本来効き目がない物でも、その有効性を信じて飲めば効
いてしまうと言うもので、“イワシの頭も信心から”などといわれ続けている
ものです。

 最近では、鍼灸プラセボ効果によるのではないかとか、ある種のサプリメ
ントもそのたぐいではなどといった批判がされています。
 しかし、そのプラセボ効果そのものはよく分かっておらず、現代医学の一大
テーマです。

 さて今回、米国の研究者らが、なぜ人はプラセボ偽薬による治療で、実際に
痛みがなくなるかを明らかにしたという話題です。

 これは、ミシガン・ヘルスシステム大学(the University of Michigan Health
System)のJon-Kar Zubieta博士らが、神経科学誌(Journal of Neuroscience,
2005, Sep.)に報告したものです。

 研究では、14人のボランティアを対象に、プラセボ偽薬を与えた際の脳内
の働きを、画像診断法により調べました。

 先ず、ボランティアの人のあごに食塩水を注射して、人工的な痛みを感じさ
せ、次いでプラセボ処理として偽の薬を与えて、その人の脳の活動を陽電子
出断層撮影装置(positron emission tomography (PET) scanner)で調べま
した。

 その結果、脳内のホルモンであるエンドルフィンの活性が増強することが明
らかになったそうです。
 この際、実際に痛みを感じるなくっているかを調べたところ、プラセボ処理
を受けた人のうち9名が、痛みを全く感じなくなっていました。

 また、中には単に今から薬を与えられると聞いただけで、エンドルフィンの
活性が高くなり、痛みを感じなくなる人もいたそうです。

 特に、疼痛を感じる脳の4つの領域(left dorsolateral prefrontal cortex,
the pregenual rostral right anterior cingulate, the right anterior
insular cortex, the left nucleus accumbens)の活動が最も変化しており、
背側前前頭皮質(dorsolateral prefrontal cortex)も痛み止めが期待され
る時に活動度が変動していたそうです。

 これらの結果から、研究者らは、プラセボ効果は単に心理的なものではなく、
生理的な現象として説明できるとしています。
 また、この結果は、鍼灸などの治療効果も説明できる可能性もあり、さらに
鎮痛薬自体の効果もプラセボによるところも大きく、80-90%の人はその恩恵を
受けているのではないかと論文で述べられています。

 プラセボであろうと無かろうと、痛みが無くなればよいのでは、という人も
いますが、やはりキチンとした科学的な解明が望まれます。

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