ビタミンEは、筋萎縮性側索硬化症に有効

●ビタミンEは、筋萎縮性側索硬化症に有効

 筋萎縮性側索硬化症(ALS, Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、運動神
経が障害されて筋肉が萎縮していく進行性の神経難病です。
 ニューヨークヤンキースで鉄人と言われたルー・ゲーリックが罹患したこと
からルー・ゲーリック病とも呼ばれています。宇宙物理学者ホーキング博士
患っている疾病です。

 この疾病は病気が進むにしたがって、手や足をはじめ体の自由がきかなくな
り、ついには呼吸さえも困難になってきますが、感覚、自律神経と頭脳はほと
んど障害されません。
 10万人に3〜5人が発症し、患者は全国で6,646人(平成14年厚生労働省調べ)
程と言われています。しかし、現在のところ原因も治療法もわかっていない難
病です。

 ところが今回、ビタミンEを常用している人は、ルー・ゲーリング病にかかる
リスクが減少することが報告されました。
 神経医学誌年報(Annals of Neurology)に、ハーバード大学のAlberto
Ascherio博士ら報告したものです。

 研究者らは、米国癌学会の癌予防研究で報告されている100万件ものデータを
解析し、1982年には少なくとも30歳となっている人について、1989年から1998
年までのビタミンEの使用とALSとの関係について調べました。

 その結果、研究対象となった人のうち、525名がALSで死亡していたそうです。
 次に、ビタミンEとの関係を調べたところ、ビタミンEを1ヶ月に15日以下しか
摂らない人では、ALSによる死亡リスクは低下していませんでしたが、1ヶ月に
15日以上、少なくとも10年摂りつづけている人では、ALSによる死亡率は62%に
低下している事が明らかになりました。

 一方、ビタミンEと同様に抗酸化作用があるビタミンCを摂りつづけている人
でも、その様なALS死亡率の低下は認められませんでした。
 なお、ビタミンCが無効だった理由は、ビタミンCが水溶性なためではないか
と研究者らは考えているようです。

 さて、今回の疫学調査では、ビタミンEがALSの発症予防に効果がありそうな
ことを示していますが、今までの研究でもALSの発症原因には過酸化物が関与し
ているという報告や、動物実験で脳内のビタミンEレベルが高まるとALSの発症
が抑えられるという結果があり、それらとよく一致しているということです。

 しかし、実際にビタミンEに抗ALS効果があるとするには、更に詳しい研究が
必要です。また、今回の調査対象は自然発生的なALSについてであって、遺伝
性のALSについては分かりません。 今後の研究に期待したいと思います。

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 「遅くとも、何もやらないよりは、やるのがよろしい」
                    (リビィウス、ローマの歴史家)

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