バイアグラは、運動能力も上昇させる

バイアグラは、運動能力も上昇させる>

 シルデナフィルはご存知、勃起障害改善薬バイアグラの化学名です。
 元々は肺などの血管を拡張させる、高血圧の治療薬として開発されたものです。ところが予想外に、臨床試験中にこれを飲んだ人の勃起障害が改善され、一躍男性用性機能改善薬として脚光を浴びました。

 シルデナフィルは、サイクリックGMP(cGMP)といわれる細胞内伝達物質を分解するフォスフォジエステラーゼ5の阻害薬で、この酵素が阻害されると血管が拡張し、ペニスへの血液流入が増えます。そして、ペニス筋肉への酸素供給量が増えて、勃起をおこす訳です。

 さて、高地では酸素量が少ないため、平地に比べて運動能力が低下しますが、バイアグラを服用すれば、スポーツ選手の高地での運動能力が増強されるという話題です。

 これは全米生理学協会の応用生理学誌(Journal of Applied Physiology)に、Palo Alto米国退役軍人局(Veterans Affairs)健康システムのAndrew R. Hsu博士らが報告したものです(論文タイトル: Sildenafil improves cardiac output and exercise performance during acute hypoxia but not normoxia)。

 研究では、10名の自転車競技選手に50 mg または100 mgのバイアグラを飲んでもらい、6Kmの自転車競技をしてもらいました。
 そして、自転車競技選手等の1回拍出量(一回の心臓のポンプ運動で送られる血液量。stroke volume =SV)、心拍出量(cardiac output =CO)などの運動に関するデータをとり、比較しました。
 なお、選手たちも、研究に立ち会った人も、本物のバイアグラかどうか或いはその量についても知らされない、厳格な2重盲鹸試験を行っています。
 この際、12,700フィート(約3,810m)の高地の環境を人工的に作り出すため、実験の1時間前から酸素の量を下げた空気をマスクを通して与えられ、競技中もそれを続けてもらいました。

 その結果、これらの自転車競技選手等は、1回拍出量が顕著に改善しており、また心拍出量もプラセボに比べて、劇的に改善する事が分かりました。
 また、高地での動脈血酸素飽和度(arterial oxygen saturation)を減少させる効果もあることも確認されました。

 全体として、効果の見られる人ではSVやCDが劇的に低下しており、それに伴い自転車競技成績も向上しており、プラセボの人に比べて39%も運動能力が高まっていたそうです。

 しかしその一方で、この効果の出方は人によって異なり、非常に効果が出る人と全く効果ない人に分かれ、10名の選手中4名はバイアグラの効果が現れましたが、残りの6名は効果が見られなかったということです。

 今後、その差が何処に由来するかを調べる予定だそうですが、バイアグラで勃起障害が改善する人と改善しない人が見られますが、その差とどのように関係するか気になります。

 以上の結果から、バイアグラは、循環器系の働きを活性化し、高地での運動能力を活性化すると考えられ、スポーツ関係者の間では評判になりそうな結果です。
 ただし、平地での運動能力は上げなかったということですが・・・。