先祖の恐怖の記憶は精子を通して子孫に

<先祖の恐怖の記憶は精子を通して子孫に!>



身の危険を感じるような恐怖感は、精子を介して子孫に伝えられるのだそうです。

これはマウスを使った実験で明らかになったもので、親が味わった恐怖体験が遺伝的に子の代に引き継がれると、米国の研究チームが科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版に報告しています。


論文タイトル: Parental olfactory experience influences behavior and neural structure in subsequent generations
科学誌名: Nature Neuroscience(2013) doi:10.1038/nn.3594 Published online
01 December 2013
著者: Brian G Dias and Kerry J Ressler


実験では、オスのマウスの脚に電気ショックを与えながら、サクラの花に似た匂いをかがせ、この匂いを恐れるように訓練しました。
次に、メスと交尾させて子供を産ませたそうです。
そして、生まれてきた子どもに様々な匂いをかがせて、その反応を調べました。

その結果、父親が恐怖を感じたサクラの匂いを嗅いだときに、強くおびえるしぐさをみせることが分かりました。
また孫の世代でも、同様の恐怖感を持つ反応があったそうです。

更に、最初の父親マウスと、子や孫マウスの精子のDNAを調べたところ、嗅覚を制御する遺伝子に変化が認められ、脳の嗅覚神経細胞の集まりが大きく発達していることが分かりました。
また父親マウスから精子を採取し、人工授精で子を育ててその脳を調べても、同様の変化が見られました。

生活習慣やストレスなどの後天的な要因で遺伝子のスイッチの入り方が変わることが知られていますが、今回の実験は、恐怖感などの強いストレスによる感情も同様に、遺伝子を通して子孫に伝えられることを示しています


また、研究チームは、「今回の成果は、恐怖症、不安障害、心的外傷後ストレス障害PTSD)などの精神神経疾患の解明につながる可能性がある」と述べています。