働かないアリに学ぶ、助け合いの精神

<働かないアリに学ぶ、助け合いの精神>
 


「働かないアリに意義がある」という本がベストセラーになりましたが、今回は「働かないアリから学ぶ助け合い」についてです。

これは、琉球大学農学部の辻和希教授らが、権威ある科学専門誌の米国科学アカデミー紀要(PNAS)に報告したものです。


論文タイトル: Public goods dilemma in asexual ant societies
科学誌名: PNAS 2013 ; published ahead of print September 17, 2013, doi:10.1073/pnas.1309010110 Biological Sciences - Evolution:
著者: Shigeto Dobata and Kazuki Tsuji


それによりますと、働きアリよりも、働きアリの労働にただ乗りする働かないアリの生存率の方が高いことが明らかになったそうです。
そしてこの研究成果は、人間がなぜ助け合うことが必要なのか、を理解するのに役立つとされています。


研究ではアミメアリの行動を注意深く観察したところ、労働せずに産卵ばかり行うアリが交じっており、このアリは働きアリとは遺伝的に異なる系統に属することが分かりました。
そしてこの働かないアリは、働きアリによる助け合いの利益にただ乗りしていました。

一方で働きアリは、働かないアリの分まで巣の外に出て労働するため過労死し、生存率が下がっていました。

しかし、働かないアリは働きアリよりも多く子どもを産むのにもかかわらず、働かないアリのみの社会では自分の子孫を残すことはできなかったそうです。
即ち、働きアリの存在に助けられていることになります。

さて、協力社会はお互いの利益が大きいのですが、逆に利己的な利益を追い求め、他者の働きにただ乗りする社会が蔓延すると、やがては社会の崩壊につながることは明らかです。
即ち、他人の助けにただ乗りした方が得であるにもかかわらず、社会全体としては助け合いが尊重されるという訳です。


最近、個人主義を超えて、利己主義に走る人が多くなっているような気がしますが、助け合いの重要性を理解するには、このアリ社会の現象が一助になりそうです。