ビフィズス菌由来の抗がん剤

ビフィズス菌由来の抗がん剤


ビフィズス菌は、オリゴ糖や乳糖を分解して乳酸を生産する乳酸菌の一種で、善玉菌の大将格とも呼べる有用菌です。
腸内でビタミンB群やビタミンKを合成することから、これらのビタミン不足が一因と考えられる貧血、肌荒れ、出血性疾患の予防にも役立ち、ヨーグルトやサプリメントなどとしてよく利用されています。


今回は更に、抗がん剤としても非常に有用であることが明らかになり、ビフィズス菌を利用した抗がん剤新薬の臨床試験が米国で開始されたという話題です。

これは、官民ファンドの産業革新機構が出資する創薬ベンチャー「アネロファーマ・サイエンス」が、米国内の治験施設で臨床試験を実施したものです。

ビフィズス菌を人体の静脈に注射するのは世界で初めてだそうで、他の抗がん剤の薬効改善などにつながる可能性もあると話題になっています。


この抗がん製剤「APS001」は、シトシン・デアミナーゼ(CD)酵素遺伝子を組み込んだビフィズス菌で、抗真菌剤5-フルオロ・シトシン(5−FC)との併用により抗腫瘍作用を発揮することをめざした新規抗がん製剤です。

その薬理作用はやや複雑ですが、次のようなものです。

「APS001」を静脈内投与すると、嫌気性を好むビフィズス菌の作用により低酸素状態にある腫瘍組織に選択的に行き着き、CD酵素を発現させます。

これに、抗真菌剤5-フルオロ・シトシン(5−FC)を併用すると、固形腫瘍組織に移行した5−FCが腫瘍組織で発現したCD酵素により、抗がん剤である5−フルオロ・ウラシル(5−FU)に変換されることにより、抗腫瘍作用が発揮されると考えられています。

実際、本剤により他の5−FU製剤では得られない極めて高い腫瘍内5−FU濃度を実現することが証明されており、抗腫瘍効果が増強されることが期待されています。

今後は、胃がんや肺がんなどの患者さんに投与して安全性や薬効を調べた上で、2020年代前半の実用化を目指すそうです。


今も、死因別死亡率のトップはがん(癌、ガン、悪性新生物)です。
一刻も早くこのような新薬が登場し、ガン撲滅が達成されることを祈ります。