若い人でも、歩くのが遅い人は老化しやすい

<若い人でも、歩くのが遅い人は老化しやすい>

 

70歳以上の高年の方で歩行速度が遅い人は、速い人よりも余命が短い傾向があるといわれています。

ところが今回、その傾向は40歳代半ばの中年期からでも見られ、歩行速度が脳や身体の老化度を示すことが分かりました。

これは、米デューク大学のライン・ラスムッセン氏らの研究チームが、JAMA誌のネットワークオープン版に報告したものです(2019年10月11日号)。

 

研究では、1972年4月から1973年3月までの間にニュージーランド南島ダニーデンで生まれ、3歳のときに心理検査や知能検査を受けた1037名のうち、45歳時点で生存している904名を対象にし、歩行速度を計測するとともに、尿検査、視力検査、聴力検査、神経認知検査、血液検査、骨密度検査、肺機能検査、頭部MRI検査などを実施しました。

その結果、歩行速度が遅い人の脳はより老化がすすんでおり、総脳容積が小さく、平均皮質厚が薄く、脳表面積が小さく、脳小血管病と関連する病変「白質病変」の発生率が高かい事が分かりました。

また、8名の審査員に写真から各被験者の顔年齢を評価してもらったところ、歩行速度が遅い人は、実年齢より老けてみえたという事です。

ところで、これらの被験者は、3歳時に相手の言葉を理解する力や運動能力の検査を行い、感情や行動を適切に制御できるかどうかなどの診断を受けている人です。

そこで、これらの幼年期の検査結果と45歳時点の歩行速度について分析したところ、3歳時点で神経認知機能が低かった人は、45歳時点の歩行速度が遅いことがわかりました。

もちろん、健康や認知機能はそれぞれのライフスタイルによっても異なりますが、この研究結果は、幼年期からすでに歩行速度が遅くなる兆候がみられることを示しています。

以上の結果から、老化の加速をあらわす19の身体的・生物学的指標と45歳の歩行速度には関連があり、歩行速度の遅い人は、速い人よりも、肺や歯、免疫系の老化がすすみがちであると結論されています。

また、幼年期の3歳に受けた神経認知検査において、すでに「将来、歩行速度が遅い人になるかどうか」が予測できると述べられています。

即ち、幼年期から始まり、中年期を通し、高年期までの数十年間にわたって、歩行速度が健康度を示すサインとなるとの事ですので、皆様、スピード感をもって歩くことにしましょう。