自然に囲まれて育った子のほうが、精神疾患になりにくい

<自然に囲まれて育った子のほうが、精神疾患になりにくい>

 

感覚的には当然のように思いますが、「自然に囲まれて育った子どもは、緑が少ない地域で育った子に比べ、後年さまざまな精神疾患にかかるリスクが低い」ことが、科学的にも証明されました。

これは、デンマークオーフス大学のクリスティン・エンゲマン氏らが行なった調査で、米国科学アカデミーの機関誌「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)に発表されたものです。

調査は、1985~2003年の間にデンマークで生まれで、10歳の誕生日の時点で同国に住んでいた人のうち、長期的な心の健康状態、社会経済的な立場、居住地のデータが明らかな94万3027人を対象に分析したものです。

また、居住地の自然環境を判断する際には、1985~2013年の間に撮影された高画質の衛星画像データを使用しています。

これらの人の誕生から10歳になるまでの居住地と自然環境を分析し、さらに10歳の誕生日を迎えてから2013年12月31日までの間に、精神疾患医療機関を訪れたか否かについて調べました。

なお、データは出生年や性別、居住地区のほか、両親の学歴や収入、精神障害既往歴などを考慮して調整してあるそうです。

そして、知的障害や拒食症、強迫神経症うつ病双極性障害気分障害、薬物乱用など18のタイプについて、子どもの頃に住んでいた地域に緑が少なかったケースと多かったケースで比較したところ、知的障害と統合失調症を除くすべての精神疾患について、緑が少ない地域に住んでいた子の方が発病するリスクが15~55%高い事がわかりました。

以上の結果から、「騒音、空気汚染、感染病、好ましくない社会経済的な状況といった要素は、精神疾患の発病リスクを高める」と結論しています。

そして、心の健康を保ち精神疾患を減らすには、都市計画に自然環境を取り入れることが重要、と指摘しています。