クローン羊のドリーは、早期老化症ではなかった!

<クローン羊のドリーは、早期老化症ではなかった!>

 今から20年ほど前ですが、世界初のクローン羊「ドリー(Dolly)」の誕生というショッキングなニュースが世界を駆け巡りました。
 そしてさらに問題となったのは、このドーリが誕生して数年後の2003年に、“ドリーは加齢に関連する変形性関節症を患っていた”とされ、安楽死させられました。
 そしてその際、クローン化で老化の進行が速まるのではとの懸念が高まり、動物の遺伝子操作は何らかの遺伝的な疾患を促すため、クローン動物の作出はやるべきではないとの意見が大多数を占めるようになりました。

 ところが最近、早期老化にクローンが関連しているとする懸念は見当違いとみられるとの研究結果が、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表されました。
 これは英国のスコットランド(Scotland)とイングランド(England)の研究チームが発表したもので、ドリーの関節症は極めて一般的な疾患だったとされています。

 この結論は、英エディンバラにあるスコットランド国立博物館(National Museum of Scotland)に収蔵されているドリーの骨のX線調査に基づいたものだそうです。

 それによりますと、ドリーは膝が不自由でしたが、その変形性関節症の程度は自然受胎で産まれた7〜9歳の羊にとって「まれではない」のだそうで、「クローン作製が原因でドリーが早発型の変形性関節症を発症したとする当初の懸念は事実無根だった」と結論づけられています。そして、今回の研究は「事実関係を明確にしたい」という願いに後押しされたとされています。
 ドリーは進行性の肺疾患のため、6歳8か月で安楽死させられましたが、ドリーの品種であるフィン・ドーセット種の羊の寿命は通常約10〜12年だそうです。このためドーリの疾病の原因が遺伝子操作により発生したものではないかとされたのですが、ドリーと遺伝子的に同一な「姉妹」の羊4頭が9歳まで正常に老化しており、年齢的に珍しい関節症の症状はみられないことが他の研究で明らかになっているそうです。

 今では、動物のクローン作製は農業分野で品種改良や繁殖のために活用されているほか、死んだペットを「再生する」ビジネスでも利用されているのですが、ヒトが生命を操作する事の可否を含め、やっぱり気になるところです。