<15年間植物状態だった男性が意識を回復>

<15年間植物状態だった男性が意識を回復>

 一般的に、植物状態が1年以上続いた場合、回復の見込みはないと考えられています。
 ところが今回、15年間植物状態だった男性が意識を取り戻したという驚くニュースです。

 この報告はフランスのマルク・ジャンヌロー認知科学研究所のアンジェラ・シリグ氏らが、科学誌「Current Biology」に発表したもので、大きな反響が出ているそうです。

・論文タイトル: Restoring consciousness with vagus nerve stimulation

・著者: Martina Corazzol 他
科学誌名: Current Biology, Vol. 27, Issue 18, R994–R996 Published in issue: September 25, 2017

 研究では、植物状態が長く続き、回復の見込みがない患者として、自動車事故にあい15年間植物状態だった35歳の男性を選びました。
 そしてこの患者さんの胸部に装置を埋め込み、迷走神経に電気を流して刺激したそうです。
 ちなみにこの迷走神経とは、頸部を通り腹部まで伸びる脳神経で、覚醒や注意に関係している神経です。

 この刺激療法を毎日1カ月間続けたところ、植物状態であらゆる望みが断ち切られていた男性は、驚くべき回復を見せました。
 男性は、指示に従って首を右から左へ動かすというような反応をするまでになり、更にセラピストが本を朗読している間、長時間目覚めていることができるようになりました。
 また、誰かが突然目の前に顔を近づけた時には、目を大きく見開く事も出来るようになったという事です。
 この男性の回復は脳の画像でも確認され、脳の領域間で情報のやり取りがより多くみられ、代謝活動も増加している事が分かりました。
 今回の画期的な発見に関して研究者らは、「刺激を与えるのが早ければ早いほど、身体機能に影響を与え、生理的平衡をある程度回復させることができる」としています。
 脳の再生医学は未だもって全く未知の分野ですが、一刻も早い進展が望まれます。