生きがいの消失は、痴呆にさせ、病死率を高める

<生きがいの消失は、痴呆にさせ、病死率を高める>


 「病は気から」と昔から言われてきましたが、実際に生きがいがなくなったりすると病気になって死に至る確率が高まり、また孤独な生活を続けるとアルツハイマー痴呆になりやすくなることが、医学統計的にも明らかになっています。

1)生きがいを消失した人は、病死率が高い。
 これは、東北大大学院医学系研究科辻一郎教授らがまとめたもので、生きがいをもてない人は、病気などで死亡する割合が1・5倍に高まることが明らかになりました。
 研究では、宮城県内の40〜79歳の健康な男女4万3391人の健康調査を実施し、「『生きがい』や『はり』を持って生活しているか」との質問に答えてもらいました。
 その結果、生きがいが「ある」と回答したのは59%で、「ない」は5%、「どちらとも言えない」は36%でした。
 次にこれらの人で、7年後までに病気にかかるなどして死亡した3048人について、死因を追跡調査したところ、がん(1100人)が最も多く、続いて脳卒中などの脳血管疾患(479人)、肺炎(241人)などで死亡していることがわかりました。
 そこで、以前答えてもらった生きがいに対する答えとの関係を調べたところ、生きがいが「ない」と答えた人は、脳血管疾患で死亡した割合は2・1倍高く、肺炎も1・8倍高かったそうです。
 また、自殺なども含めて死亡した人の割合を全体でみると、生きがいがない人は、ある人に比べ1・5倍高いことが明らかになりました。
 以上の結果より、「良好な感情を持つことは、感染症を防ぐ免疫系に良い効果がある。定年後も、社会活動への参加などで生きがいを持ち続けることが大事。」と結論されています。


2) 孤独の人はアルツハイマー病のリスクが高い。
 孤独だと、アルツハイマー病になるリスクが高まるそうです。
 これは、米ラッシュ大医療センターの研究グループが、学術誌「総合精神医学文書」で報告したもので、孤独な人は、認知症を発達させる傾向が2倍高いということです。
 研究では、アルツハイマー病と孤独感との関係を分析するため、被験者823人(平均年齢80.7歳)を対象に、孤独感と認知症との関連を4年間にわたって調べました。
 孤独感を数値化するため、数が多いほどより孤独感が強いことを示す5段階評価したところ、そのスコアが2.3の人では、76人がアルツハイマー病になっていました。
 そしてアルツハイマーになるリスクは、スコアの1ポイント上がるごとに約51%増加しており、最もスコアの高い人(3.2)は、最も低い人(1.4)より、そのリスクが約2.1倍となっていたそうです。

 以上の2つの結果はいずれも、日ごろの心持ちが大切で、「病は気」から起こることを実証したことになります。
 生きがいを持ち、生き生きとした生活を送る事で、人生を楽しく有意義に過ごせそうです。