精液は、パートナーの子宮頚癌を悪化させる。


<精液は、パートナーの子宮頚癌を悪化させる。>


 男性の精液がパートナーの膣内で射精されると、精液中の精子が活発に動き廻って子宮に到達し、そこで卵子と出会って受精が完成します。
 この精液中には、この一連の動きをスムーズにさせるホルモンや酵素が多く含まれています。

 ところが精液中には受精をスムーズにさせる作用以外に、パートナーの子宮にがん細胞が存在する場合には、がん細胞の増殖を助けて子宮頚癌や子宮癌を悪化させる可能性があるそうです。

 これは、英国医学研究審議会(Medical Research Council, MRC)のHenry Jabbour博士らが見つけたもので、がんの危険性のある人がセックスをする際には、コンドームをつけたりして、精液が直接子宮内に放出されるのを止めさせた方がよいと警告されています。

 子宮がんは、日本女性が罹るがんのうちの1/3から1/4を占めるものです。
 この子宮がんには、子宮頚がんと子宮体がんに区別されますが、日本人の場合は90%以上が子宮頚がんといわれています。

 この子宮頚がんは、ヒトパピローマウイルスの感染により起こる感染症の一つで、そのために感染防止を目的にコンドームをつける事が有効といわれてきました。

 ところがこの報告はウイルス感染を抑えるためではなく、精液中のホルモン様物質そのものを体内に入れないようにすべきという事で、注目を集めています。

 この精液中の成分はプロスタグランジンと呼ばれる成分で、1936年に精液から分離されたもので、局所の血流増加作用や血圧低下作用がある事が分かっています。
 また、女性の生殖器の細胞にも多く存在し、月経周期に応じて子宮壁を厚くしたりする子宮収縮作用や、細胞の増殖をコントロールしていることが知られています。

 更に今までの研究で、子宮頚癌や子宮癌の細胞は細胞表面にプロスタグランジンに対する受容体を持っている事が分かっており、プロスタグランジンがあるとこれらの癌細胞の増殖が高まる事が予想されていました。

 そこで、研究チームはそのようなガン細胞にプロスタグランジンを与え、その影響を調べました。

 その結果、プロスタグランジンを添加すると、ガン細胞の増殖を支配するシグナル伝達系が促進され、細胞の増殖を高まることが確認されたということです。

 以上の結果から研究者等は、子宮頚癌などの子宮癌のリスクを下げるために、セックスする際にはパートナーにコンドームを装着してもらい、プロスタグランジンが直接子宮内に暴露しないようにすることが重要と述べています。

 また、今回の発見は逆に、プロスタグランジンががん細胞のレセプターにくっつけなくすると、がんの進展を抑制する事になり、新しいがんの治療法にとなることも期待されるということです。