収入が低い人は老化しやすい。

<収入が低い人は老化しやすい。>

収入の大きさと病気になりやすさとの間には因果関係がある、と云われています。

例えば、収入と肥満やメタボになりやすさは関係がありそうですよね。

そこで今回は、「収入が低い人は老化しやすい」事が分かったという話題です。

身体が傷ついたりして炎症が起こった時や、ウイルスなどの感染症にかかった時に、C反応性タンパク質(C-reactive protein, CRP)というタンパク質が体内に多く出来ます。

また逆に、このタンパク質が多いと、何か体に異常が起こっている事を示しており、病気の診断の際の疾病マーカーとして用いられています。

ところが、低所得者の人にはこのCRP値の高い人が多く、これが心疾患をたかめ、また収入の低い人は老化スピードが高いと云われている原因の一つなのでは、という話題です。

この研究は、南カルフォルニア大学のEileen Crimmins教授らが行ったもので、医学専門誌のBrain, Behavior and Immunity誌に報告されています。

米国国立衛生研究所(NIH, National Institutes of Health)の資金の下に行われた、「貧乏であることが、健康上のリスクを高めるか」を明確にするために実施された研究の一部です。

今までも、CRPタンパク質は、心疾患を患った時にも増える事が知られていましたが、それ以外に患者さんの社会的地位にも関係しているらしいことが、専門家の間でささやかれていたのだそうです。

そこで、米国に住む人を対象に、CRPのレベルと収入の関係を調べました。

その結果、収入が低く、貧民層とされるグループの成人ではCRPレベルが高い人の割合が高く、通常の収入の人ではCRP値の高い人が9.1%だったのに対し、貧民層では 15.7%と非常に高い事が分かりました。

また、低所得者の多い少数民族や女性もCRP値が高い割合が多かったそうです。

そして、このCRP値の違いを見ることにより、収入の少ない人が何故老化が早いかを説明出来る、と結論されています。

また黒人やラテンアメリカ系の人、このグループに属する女性はCRPのレベルが特に高く、そのような人には肥満の人が多いことから、肥満がCRPを高くさせている最大の原因と考えられるそうです。

そして、不健康な生活習慣を行う事以上に、貧乏であることは病気になりやすくさせるリスク因子であり、その様な人の疾病の原因には、かなりの部分でCRPが関連しているとされています。

<精液は、パートナーの子宮頚癌を悪化させる。>


 男性の精液がパートナーの膣内で射精されると、精液中の精子が活発に動き廻って子宮に到達し、そこで卵子と出会って受精が完成します。
 この精液中には、この一連の動きをスムーズにさせるホルモンや酵素が多く含まれています。

 ところが精液中には受精をスムーズにさせる作用以外に、パートナーの子宮にがん細胞が存在する場合には、がん細胞の増殖を助けて子宮頚癌や子宮癌を悪化させる可能性があるそうです。

 これは、英国医学研究審議会(Medical Research Council, MRC)のHenry Jabbour博士らが見つけたもので、がんの危険性のある人がセックスをする際には、コンドームをつけたりして、精液が直接子宮内に放出されるのを止めさせた方がよいと警告されています。

 子宮がんは、日本女性が罹るがんのうちの1/3から1/4を占めるものです。
 この子宮がんには、子宮頚がんと子宮体がんに区別されますが、日本人の場合は90%以上が子宮頚がんといわれています。

 この子宮頚がんは、ヒトパピローマウイルスの感染により起こる感染症の一つで、そのために感染防止を目的にコンドームをつける事が有効といわれてきました。

 ところがこの報告はウイルス感染を抑えるためではなく、精液中のホルモン様物質そのものを体内に入れないようにすべきという事で、注目を集めています。

 この精液中の成分はプロスタグランジンと呼ばれる成分で、1936年に精液から分離されたもので、局所の血流増加作用や血圧低下作用がある事が分かっています。
 また、女性の生殖器の細胞にも多く存在し、月経周期に応じて子宮壁を厚くしたりする子宮収縮作用や、細胞の増殖をコントロールしていることが知られています。

 更に今までの研究で、子宮頚癌や子宮癌の細胞は細胞表面にプロスタグランジンに対する受容体を持っている事が分かっており、プロスタグランジンがあるとこれらの癌細胞の増殖が高まる事が予想されていました。

 そこで、研究チームはそのようなガン細胞にプロスタグランジンを与え、その影響を調べました。

 その結果、プロスタグランジンを添加すると、ガン細胞の増殖を支配するシグナル伝達系が促進され、細胞の増殖を高まることが確認されたということです。

 以上の結果から研究者等は、子宮頚癌などの子宮癌のリスクを下げるために、セックスする際にはパートナーにコンドームを装着してもらい、プロスタグランジンが直接子宮内に暴露しないようにすることが重要と述べています。

 また、今回の発見は逆に、プロスタグランジンががん細胞のレセプターにくっつけなくすると、がんの進展を抑制する事になり、新しいがんの治療法にとなることも期待されるということです。

<父親の食生活が、生まれてくる子供の健康に大きく影響>


父親の食生活と生まれてくる子供の健康との間に、強い関係があることが分かりました。

妊娠中の母親の食生活が、おなかの子供の健康に関係することはよく知られていますが、母親だけでなく、父親も健康的な食事をしないといけないようです。

これは英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に、カナダ・マギル大学(McGill University)のSarah Kimmins氏らが報告したものです。

論文タイトル: Low paternal dietary folate alters the mouse sperm epigenome and is associated with negative pregnancy outcomes
医学誌名: Nature Communications 4, Article number: 2889 doi:10.1038/ncomms3889
著者: R. Lambrot, S. Kimmins 他


女性の場合、流産や生まれてくる子供の先天異常のリスクを減らすために、妊娠前及び妊娠中に葉酸(ビタミンB9)サプリメントを摂取する事が推奨されています。
また、葉酸が多く含まれている、緑色葉野菜、穀物、果物、肉類などを多く摂るようにと云われています。
しかし、父親の食生活についてはほとんど注目されていませんでした。

そこで研究者らは、ビタミンB9が不足している餌を雄マウスに与え続け、生まれてくる子供に対する影響を調べました。

その結果、十分な量の葉酸を摂取している雄マウスに比べて、ビタミンB9が欠乏している餌を与えられている雄マウスを父親の場合、生まれてくる子供は先天性異常の発生率が高くなっていることが分かりました。

ビタミンB9が欠乏した場合は、先天異常の発生率が30%近く増加していたそうです。
また、頭蓋顔面奇形と脊髄奇形の両方を含む極めて重度の骨格異常も見られたということです。

研究チームによると、父親の精子の中の「エピゲノム」と云われる生命に必要なタンパク質を合成するための遺伝子の発現スイッチが食事や他の生活経験の影響を受けて、胚発生期の抑制機能をなくさせてしまうため、との事です。

今回の実験はあくまでもマウスのものですが、人間にも当てはまると考えられることから、「父親となる男性の食生活が重要」との警告のようです。

そして、「父親は何を口にするか、何を喫煙するか、何を飲むかについて考え、自分が来るべき世代の親であることを忘れてはいけない」とされています。