自閉症はホルモン投与で改善できる

自閉症はホルモン投与で改善できる>


自閉症の症状である、対人コミュニケーション障害が、ホルモンの1種である「オキシトシン」を鼻から吸入することで改善することが分かりました。


これは、東京大学院医学系研究科精神医学分野の山末英典准教授らが、米国医師会の精神医学に関する雑誌「JAMA Psychiatry」に報告したものです。


論文タイトル: Mitigation of Sociocommunicational Deficits of Autism Through Oxytocin-Induced Recovery of Medial Prefrontal Activity: A Randomized Trial
著者: T. Watanabe 他
医学誌名: JAMA Psychiatry. 2013; doi: 10.1001/jamapsychiatry.2013.3181 Original Investigation December 18, 2013


スペクトラム障害は、高い知能や言語の理解能力を持っているにも関わらず、他人の表情や声から気持ちを汲み取ることが出来なくなる、自閉症の障害の一つです。

この研究グループは、表情や声色から相手の気持ちを判断する事が自閉症スペクトラム障害の患者さんでは劣っており、これには内側前頭前野の活動低下が関与していることを報告していました。

今回の研究では、脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンで、子宮平滑筋収縮作用を介した分娩促進や乳腺の筋線維を収縮させ、乳汁分泌促進作用などをもたらすことで知られていた「オキシトシン」の点鼻スプレーを投与する事で、症状の改善が可能かどうかを調べました。

研究では東大病院に通う、20代から40代の40名の自閉症スペクトラム障害の男性を対象として、臨床試験を実施しました。
その結果、オキシトシン投与により低下していた脳活動を有意に上昇し、それと共に対人コミュニケーションの障害が改善されることが明らかになりました。

オキシトシン点鼻スプレーを1回単回投与した場合でも、表情や声色を活用して相手の友好性を判断する行動が増え、かつ内側前頭前野の活動が回復することが示されたそうです。

そして、これらの行動上の改善度と脳活動上の改善度がお互いに関与しあっており、オキシトシンによって脳の活動に変化を与え、障害の治療も可能、としています。


今後更に試験データを解析して有効性と安全性の検証を行い、大規模な臨床試験をおこなう予定との事です。


さて余談ですが、オキシトシンを経口摂取しても胃腸で分解されるために、食品やサプリメントなどの利用はまず無理のように思われます。
しかし、東邦大学の有田秀穂先生は、「家族の団らんや夫婦、恋人とのふれあい。感情を素直にあらわす態度。そして、親切を心がける。」ことによりオキシトシン分泌が促進され、セロトニン神経も活性化できると話されていますので、試してみる価値はありそうです。