老化防止薬:食時制限をしなくてもよい薬

<老化防止薬:食時制限をしなくてもよい薬>


ご存知のように、カロリーを摂りすぎない事が、健康で長生きの秘訣です。
昔から、「腹八分目」とか「仙人はカスミを食べて長生きする」と言われていました。
実際、カロリー制限をしたマウスは長寿できる事が、最近の科学的な研究で明らかになっています。
しかし、いくら長生きできるからと言って、目の前の空腹は避けたいところですよね。

そこで今回は、そのような食事制限をしなくとも、長寿が可能となる薬の開発のお話です。
これは、米国の有名な科学誌Science (2009, Oug. 2nd Issue)に、ロンドン大学教授のDominic J. Withers博士らが報告したものです。

研究では、遺伝子操作の手法を用いて、厳格な食費制限をしなくとも、それと同じような現象を与える、S6K1と呼ばれる蛋白が産生できないようにしたマウスを遺伝子操作により作りました。
ちなみに、このS6K1はS6キナーゼ1と呼ばれる酵素で、この酵素をもたないマウスは、グルコース不耐性などの糖尿病関連症状を示すにもかかわらず、インスリン感受性がきわめて高く、空腹時血糖値も正常であることがわかっています。

すると、このマウスは糖尿病だけでなく、加齢性の疾患にも罹りにくくなっている事がわかりました。
実際、雌マウスでは寿命が19%延長する事がわかりました。
この通常より19%長く約950日生きた雌のマウスは、比較的痩せており、骨が強く、2型糖尿病に罹りにくかったほか、頭がよく好奇心の強い傾向がみられたということです。
更に、免疫系で重要な役割を担うT細胞にも「若さ」がみられ、加齢による免疫力の低下が抑制されていることが示されました。

なお、残念ながら、雄マウスにはそのような寿命延長はみられなかったそうですが、その他の健康効果は雌と同様にあったと言う事ですので、やや安心です。

さて、この研究では、遺伝子操作と云う手法を用いていますが、同様の効果は薬剤を用いてもおこる可能性があります。
最近の報告によりますと、ラパマイシン(日本国内未承認、主に移植患者に使用されるmTOR阻害薬)と云う薬が、マウスの寿命を延ばしたことが報告されています。
また、研究者の間では、糖尿病薬のメトホルミンにも、同様の効果があるのでないかとささやかれてています。

勿論、ヒトでも同様の効果があるかは今後詳しく調べる必要がありますが、このような薬が実際に抗老化にも有効であるならば、仙人のように、あまり快適な生活とはいえないような山にこもり、食べ物を制限する必要がなくなります。

尤も、私は仙人の暮らしにも憧れますが・・・。


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