ヘアスプレーは異常出産を高める。一方、葉酸はそのリスクを下げる

<ヘアスプレーは異常出産を高める。一方、葉酸はそのリスクを下げる>


 ヘアスプレーやヘアカラーの健康に及ぼす危険性については、このところ色々なところで、耳にするようになりました。
 今回は、ヘアスプレーを吸引する環境で働く妊娠女性では、男の子を出産した場合に、子供は尿道下裂という性器の先天性異常を起こすリスクが二倍以上に高まる、と云うニュースをお知らせします。

 これは、環境と健康に関する専門誌のEnvironmental Health Perspectives(2008, November 21 issue)に、ロンドンインペリアルカレッジのPaul Elliott教授らが報告したものです。

 尿道下裂症というのは、男子の性器によく見られる先天性異常です。
 おちんちんの下側に位置している尿道海綿体という部分の形成が悪く、尿道がその海綿体のかけた部分に開いてしまったものをいいます。
 通常は、1歳になるまでに手術により治療可能ですが、重症例では排尿、性交不能などの問題が起こるとされています。
 英国や米国では、男の子の250名中1名の割合で起こり、かなり頻度の高い先天性異常です。

 今までの研究で、この尿道下裂症は体のホルモン異常により、生殖過程で問題が生じて発生する可能性が指摘されていました。

 そこで研究者らは、ロンドンおよびその他の120の地域で、尿道下裂症の子供を持つ471名の母親、及び490名の正常出産をした母親を対象に調査しました。
 その内容は母親の健康やライフスタイルを調べたものですが、特に仕事中の化学物質の暴露の有無、家族暦、食事内容、喫煙、葉酸サプリメントの服用についても調べたそうです。

 その結果、妊婦さんが、妊娠の最初の3ヶ月間に職場等でヘアスプレーを浴びる環境にいた場合、このような先天性異常を持つ男を出産するリスクが2-3倍になることが明らかになりました。

 また、この研究で、妊娠3ヶ月以内に葉酸サプリメントを摂取すると、そのような問題が起こる頻度が36%低下することも同時にわかりました。
 ちなみに、英国保健省は、脊椎披裂のような神経管欠損症の先天異常を抑えるために、妊娠12週間には葉酸サプリメントを摂取することを推奨しています。

 また、以前の小規模試験で、尿道下裂症はベジタリアン食(菜食主義食)との関係が示唆されていましが、今回の研究により妊娠中のベジタリアン食とは関係がないことも明らかにされています。

 そして、尿道下裂症のような先天性異常児のリスクを下げるには、ヘアスプレーを避け、葉酸サプリメントを摂ることが有用であると、結論されています。


 と云うことですので、妊娠中の方は、サリドマイド事件で明らかになったように不必要な薬を飲まないだけでなく、ヘアスプレーなどの吸引などにもご注意ください。
 そして、健康なお子様をご出産されますよう。


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