女性の性欲回復にテストステロンパッチ

<女性の性欲回復にテストステロンパッチ>


 男性の性改善薬として、バイアグラを代表とする勃起障害の改善薬が発売され、多くの人に使われています。
 しかし、残念ながら女性用の性欲減退治療薬はあまりなく、その開発が求められてきました。

 そうした中で、今回テストステロンのパッチ(貼付)剤が有効であることが報告されていますので、お知らせします。

 これは、オーストラリア、モナッシュ大学女性健康学教授のSusan R. Davis博士らが、医学誌「New England Journal of Medicine」(2008, October 6th)に発表したものです。

 その報告によりますと、テストステロンパッチ剤の使用により、閉経後の女性の性的満足度が著しく改善されたと言うことです。

 今までも、ヨーロッパでは、テストステロンパッチ剤が女性の性欲減退治療薬として利用されています。
 しかし、米国食品医薬品局(FDA)は2004年12月に、長期的な安全性を示すデータがないことを理由に承認申請を棄却したと云う経緯がありました。

 そこで、今回の 52週間にわたり実施された研究では、24週間の有効性試験とともに、全期間を通じた安全性を評価しました。

 性欲減退を訴える閉経後女性で、エストロゲン療法を受けていない約800人を対象とし、テストステロンパッチ1日300μg群、1日150μg群およびプラセボ偽薬群の3群にわけました。

 24週間後に性満足度を調べたところ、300μg群の女性は4週間に平均2.1回の満足できる性行動があったそうです。

 なお、低用量群でも1.2回、プラセボ群では0.7回ということですので、テストステロン群では、いずれの用量でも性欲の向上がみられたことになります。

 しかし、気になる副作用としては無駄毛の発生があったそうですが、治療を中止するほどではなかったとされています。

 また、テストステロン群の女性4人が研究期間中に乳癌を発症しましたが、プラセボ群には乳癌の発症例はなかったということです。
 ただし、このうち2人は研究開始前から乳癌があったと思われ、残りの2人も乳癌リスクの高い女性で、偶発的なものである可能性が高いということです。

 さて、今回の研究は、女性の性改善を行うためには有用な研究結果ですが、高齢になるにつれて性欲減退は当然のことであり、配偶者への愛情がなくなったわけでもないと、他の専門家は強調しています。

 しかしその一方で、「性的満足度によって生活の質(QOL)が損なわれるのであれば、女性にも男性と同じように治療を選ぶ権利がある」との意見にも同意できます。

 従って、今回のテストステロンパッチ剤は有効かつ安全であるという結果は、その利用に前向きの成績であると思われ、今後更なるの研究が期待されます。


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