精子は孤独ではない。競争に打つ勝つために、力を合わせることも。

精子は孤独ではない。競争に打つ勝つために、力を合わせることも。


 いつも思うのですが、精子卵子と出会って受精に至る過程での、精子同士
の競争は本当にすごいと感心しています。
 何億という自分と同じような精子に打ち勝って、最後は一匹しか卵子に会え
ないのですから・・・。
 そういう過激な競争に打ち勝ったのが、我々です。それを思えば、人生の中
の競争なんか、たかが知れています。

 さて、精子はそのような過激な競争に打ち勝つため、たった一匹で女性の体
内で戦っていると信じていたのですが、ある種の生物の精子卵子に出会うま
では、精子同士が助け合うことがわかりました。

 これは、シェフールド大学のSimone Immler博士らが、ラットやマウスを用い
た研究で明らかにしたものです(Immler S, Moore HDM, Breed WG, Birkhead
TR (2007) By Hook or by Crook? Morphometry, Competition and Cooperation
in Rodent Sperm. PLoS ONE 2(1): e170. doi:10.1371/journal.pone.0000170; 
論文タイトル: Rodent sperm work together for better results)。

 これは、特にメスが受け入れ態勢が充分な時で、かつ精子が多くのライバルと
競争する必要のある時に有効でのようです。

 それによりますと、ある種のマウスの精子は、緻密に計画された協力システム
を持っているのだそうで、これらの精子の頭部に鍵状の構造があるのだそうです。

 そしてこれらの精子は、お互いに5〜100匹で集合を作って泳ぐことが出来るよ
うになり、そのおかげで一匹づつが泳ぐよりも早いスピードとなり、卵子に届く
までの時間が短くなるということです。

すなわち、各々の精子はライバルの精子達に打ち勝つことのみを考えているわけ
ではなく、ある時にはお互いに協力し合って、他の集団より早く卵子にたどり着
いて、受精する確率を高めていると考えられるそうです。

 激しい勝ち残り競争に勝つには、時にはライバル同士が協力し合うことも必要
ですよね。
 受精後の人生にも応用できそうです。


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