ボトックス治療で、手の震えが改善

● ボトックス治療で、手の震えが改善


 書痙は、字を書く時などに突然手が振るえだし、字が書けなくなってしまう、
厄介なものです。
 昔、田中首相ロッキード事件で逮捕起訴された際の証人喚問で、当時の大
全日空会長が陳述書に署名する際、緊張のために手が震え、署名出来ないシ
ーンが思い出されます。

 指や手あるいは腕の筋収縮の不随意運動によるもので、有効な治療薬はなく、
緩和療法、催眠療法、鍼などの治療法にも限界があるとされていました。

 今回、この書痙の治療に、しわ取り効果で知られるボトックスが有効である
事が分かったというニュースです。

 これは、アムステルダム・アカデミー医療センターのJose Kruisdijk博士が、
精神神経医学専門誌Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry
(2006, Dec. 20)号に報告したものです。

 研究では、書痙患者さん40人を対象にボトックスを注射(筋肉内)し、12週
間にわたり観察ました。

 ちなみにボトックスは、ボツリヌス菌が生成する食中毒の原因になる毒素を
基にして開発された薬剤で、アセチルコリンの分泌を阻害し、筋肉を弛緩させ
る作用があります。
 1998年に弱視などの眼疾患の治療薬として承認され、その後、首や肩の収縮
をもたらす運動障害の治療に、米国食品医薬品局の承認を受けているものです。

 今回の書痙智慮に対する研究では、ボトック投与群では20人中14人(70%)
で改善が認められ、対象のプラセボ群(19人中6人で改善、31.6%)に比べ、
明らかに効果があったとされています。

 この治療法は実際に有効で、治療開始1年後も参加者の50%がボトックス注
射を継続していました。
 また、副作用も少なく、一部に軽い手の脱力がみられた程度で、それも一時
的なものだったそうです。

 今回の研究そのものは、初歩的で小規模な研究ですので、今後更に詳しい研
究が必要ですが、ボトックス療法が神経疾患にも広く使われていく可能性を示
したもので、今後の研究成果が楽しみです。

 
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