肥満になると記憶力は低下する: 抗肥満ホルモンが関係。

● 肥満になると記憶力は低下する: 抗肥満ホルモンが関係。

 糖尿病などになっている肥満の人は、長期間記憶力が低下する事が知られて
いますが、その理由についてははっきりとは分かっていません。

 ところが今回、セントルイス大学の研究者らが、「肥満になると記憶力が低
下するのは、食欲に関係するホルモンの分泌が減少する事と強い関係がある」
との報告を行っていますので、お知らせします。

 これは、セントルイス大学医学部Susan A. Farr博士らが明らかにしたもの
です。

 この肥満に関連したホルモンは、レプチン(Leptin)と呼ばれる脂肪細胞か
ら分泌されるホルモンで、お腹が一杯になるとこのホルモンが分泌されて、食
欲がなくなります。
 ところが、肥満症の人では食欲を調節するこのレプチンの作用が悪くなって
いるため、お腹が一杯になっても食欲が落ちず、そのため食べすぎてカロリー
オーバーになり肥満を引き起こすとされています。

 今回の研究では、マウスを用いてレプチンが学習や記憶にどのような影響を
与えるかを調べました。

 まず、正常なマウスについて、迷路を用いて学習能力や長期間記憶を調べた
ところ、レプチンを投与された場合には、これらの知能能力が向上することが
わかりました。

 次に、アルツハイマー病の原因と考えられている、脳内にアミロイドβ蛋白
が蓄積し、記憶力や学習能力が低下した変異マウスを用いて、同様の実験を行
いました。

 その結果、レプチンを投与した場合には、正常マウスの場合と同様に記憶力
や学習能力が向上しており、特にアミロイドβが蓄積していたマウスの場合は
それが顕著だったそうです。

 このことから、レプチンは脳に影響し、記憶力等の向上に有効であると結論
されています。

 さらに、老化してアルツハイマー症状を発症したマウスでは、より低容量の
レプチンでその効果が認められたということで、今後アルツハイマー治療にも
重要な知見となりそうです。


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