バイアグラは、高地での運動能力を45%も上昇する。

バイアグラは、高地での運動能力を45%も上昇する。

 シルデナフィルはご存知、勃起障害改善薬バイアグラの化学名です。
 元々は肺などの血管を拡張させる、高血圧の治療薬として開発されたもので
す。ところが予想外に、臨床試験中にこれを飲んだ人の勃起障害が改善され、
一躍男性用性機能改善薬として脚光を浴びました。

 シルデナフィルは、サイクリックGMP(cGMP)といわれる細胞内伝達物質を
分解するフォスフォジエステラーゼ5の阻害薬で、この酵素が阻害されると血
管が拡張し、ペニスへの血液流入が増えます。そして、ペニス筋肉への酸素供
給量が増えて、勃起をおこす訳です。

 さて、高地では酸素量が少ないため、平地に比べて運動能力が低下します。
 今回、バイアグラを服用すれば、スポーツ選手の高地での運動能力が増強さ
れるのではないかというアイデアの下で行われた研究について、お知らせいた
します。

 これは全米生理学協会の応用生理学誌(Journal of Applied Physiology,
2006, June issue)に、Palo Alto米国退役軍人局(Veterans Affairs)健
康システムのAndrew R. Hsu博士らが報告したものです(論文タイトル: 
Sildenafil improves cardiac output and exercise performance during
acute hypoxia but not normoxia)。

 研究では、10名の自転車競技選手に50 mg または100 mgのバイアグラを飲
んでもらい、6Kmの自転車競技をしてもらいました。
 そして、自転車競技選手等の1回拍出量(一回の心臓のポンプ運動で送られる
血液量。stroke volume =SV)、心拍出量(cardiac output =CO)などの運
動に関するデータをとり、比較しました。
 なお、選手たちも、研究に立ち会った人も、本物のバイアグラかどうか或い
はその量についても知らされない、厳格な2重盲鹸試験を行っています。

 この際、12,700フィート(約3,810m)の高地の環境を人工的に作り出すため、
実験の1時間前から酸素の量を下げた空気をマスクを通して与えられ、競技中も
それを続けてもらいました。
 ちなみに、これにより大気圧などの他の影響は無視する事ができるとしてい
ます。

 その結果、これらの自転車競技選手等は、1回拍出量が顕著に改善しており、
また心拍出量もプラセボに比べて、劇的に改善する事が分かりました。
 また、高地での動脈血酸素飽和度(arterial oxygen saturation)を減少
させる効果もあることも確認されました。

 全体として、効果の見られる人ではSVやCDが劇的に低下しており、それに伴
自転車競技成績も向上しており、プラセボの人に比べて39%も運動能力が高
まっていたそうです。

 しかしその一方で、この効果の出方は人によって異なり、非常に効果が出る
人と全く効果ない人に分かれ、10名の選手中4名はバイアグラの効果が現れまし
たが、残りの6名は効果が見られなかったということです。

 今後、その差が何処に由来するかを調べる予定だそうですが、バイアグラ
勃起障害が改善する人と改善しない人が見られますが、その差とどのように関
係するか気になります。

 以上の結果から、バイアグラは、循環器系の働きを活性化し、高地での運動
能力を活性化すると考えられ、スポーツ関係者の間では評判になりそうな結果
です。

 ちなみに、平地での運動能力は上げなかったということですので、単にオリ
ンピック等の競技大会で問題となっているような、ドーピングのような効果が
期待できるかは疑問ということですので、念のため。

 しかし、今回ボランティアとなった自転車の選手たちは、勃起しっぱなしだ
ったのでしょうか? 気になりませんか?


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