鍼は頭痛にある程度有効だが、単に精神的なもの?

●鍼は頭痛にある程度有効だが、単に精神的なもの?

 世界中で、鍼治療は人気となってきています。その傾向は日本でも同様で、
町のあちこちで鍼治療院を見かけるようになりました。

 ところが今回、“鍼治療は確かに頭痛などの緩和にある程度有効だが、それ
は主に精神的なプラセボ効果である”とした報告が発表され、物議をかもし出
しています。

 これは、ドイツ・ミュンヘンにあるTechnische大学代替医療センターのKlaus
Linde博士が、米国医学会誌(The Journal of the American Medical Association,
2005; vol 293: pp 2118-2125)に報告したものです。
 研究では、偏頭痛の治療に鍼治療が有効かどうかを調べました。

 ご存知のように、東洋医学的には、体中に点在する200もの特定のツボに鍼を
打つ事で、 “経絡”を刺激して治療するというものです。
 しかし、西洋医学的にはそのような経絡の存在が疑問視されており、むしろ、
鍼は痛みを抑える脳のホルモンであるエンドルフィンの分泌を高めたり、神経
伝達に必要なセロトニンの分泌を変化させるのではないかと考えられていまし
た。

 そこで、今回の研究では、本来の鍼治療の“ツボ”とは異なる部位に鍼を打
った場合との比較をしました。
 偏頭痛持ちの302名の患者さんを2つグループに分け、一方のグループには本
来のツボを、もう一方のグループにはツボとは異なる部位へ鍼治療を施したそ
うです。

 このような鍼治療を、8週間に12回おこなったところ、治療後の一ヶ月以内に
頭痛の程度が改善しており、1ヶ月あたりに起こる頭痛の頻度が5回程度から3回
程度にまで減少したそうです。
 しかし、ツボに鍼を打った群と、ツボとは異なる部位に打った群とに差は見
られず、また全く治療を受けなかった群でも約15%の改善が見られたそうです。

 この結果から研究者等は、ツボとは異なる部分に鍼を刺した場合に比べて特
に効果が高まる事はなく、単に精神的なプラセボ効果であろうと述べています。

 今回の報告と同様に、鍼治療にはプラセボ以上の効果がないとする研究結果
は以前から何度か報告されています。また、“鍼は効果があるに違いない”と
考える患者さんに特に効果がある事も知られています。

 しかし、プラセボ効果といえども、実際に患者さんの痛みを改善する事自体
には間違いなく、治療という点から考えると意味があるのではないか、とする
考えもあります。
 また、鍼治療の施術者は、一般に患者さんの立場に立ち、患者さんと話をし
ながら治療を行う事が多いのですが、このような患者さんとの対話が効果を高
めているのではないかとする意見もあります。

 なお、今回の研究結果は偏頭痛に特化したもので、その他の関節炎などへの
効果については分かりません。今後更に科学的な解明が期待されます。

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