ヒトの性行動を支配するフェロモンの研究

●ヒトの性行動を支配するフェロモンの研究

 最近、アロマセラピーが盛んになってきています。アロマセラピーは、芳香
を嗅ぐ事により心を安らかにし、更に病気の治療にも匂いを利用しようとする
ものですが、異性を惹きつけるフェロモンとしての作用、或いは媚薬としての
応用は昔から考えられてきました。

 フェロモンは、性行動を支配すると考えられている化学物質で、特に昆虫な
どでその存在がよく知られていますが、人でも本当にそのようなものがあるか、
そしてそれが性行動を支配するようなものなのかなど、昔から議論の対象とな
ってきています。

 ところが今回、スエーデンの研究者が、人間にも少なくとも2種類のフェロモ
ンが存在し、性行動を支配している、との報告を行っていますので、お知らせ
します。

 これは、生物学的な研究で有名なカロリンスカ研究所のIvanka Savic氏をは
じめとしたスエーデンの研究者が、2種のヒトのフェロモン様物質を見つけたと
いうものす。

 そのうちのひとつは“AND(アンドロゲン様物質)”と呼ばれる、男性の汗に
含まれるもので、もうひとつは“EST”と呼ばれる女性の尿から見つけられたエ
ストロゲン様の物質だったそうです。

 これらの物質が性行動を支配しており、脳の働きを支配すると、米国科学ア
カデミー会誌(Proceedings of the National Academy of Sciences of the
United States of America. May 9-13, 2005)に述べています。

 研究では、20-30歳台の12名の通常の健康な性行動を行う男性、同様に12名の
健康な女性、そして36名の同性愛男性について調べました。
 ちなみにこれらの人たちは教育レベルも同じ程度で、違いは生物学的な性及
び性行動だけだそうです。

 これらの人に、AND,EST及びラベンダーオイルなど様々な臭いをかいでもらい、
そのとき同時に脳の画像診断を行ってどの領域が活性化されるかを調べました。

 その結果、健康な男性の場合はANDではなく、ESTによって脳が活性化された
そうです。一方、女性では逆にESTではなく、ANDによってのみ活性化されるこ
とがわかりました。

 ところが、同性愛の男性では、ESTではなく、ANDで脳が活性化されたそうで
す。このパターンは、女性と同じで、通常の男性とは逆の結果です。
 なお、これらどのグループも、匂いをかいでも、性欲に関与する脳領域は活
性化されなかったそうです。

 このことから、匂いをかいだ後の脳の働きはより複雑なものであろうとされ
ていますが、今回の研究で2種の物質が匂いのフェロモンとして働き、実際に脳
が活性化する事を示しています。
 恐らくこれが引き金となって、性に依存した性行動が起こるものと考えられま
す。

 魔法の媚薬になるのでしょうか? 楽しみな研究です。

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 「健康の維持は我々の義務である。
  生理学的道徳とも云うべきものの存する事を知る人は、まれである。」
                              (スペンサー)

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