妊婦さんの歯周病は要注意:早産・低体重児出産のリスク

● 妊婦さんの歯周病は要注意:早産・低体重児出産のリスク

 歯周病菌は単に歯を抜け落とすだけでなく、動脈硬化や心疾患に陥る危険性
が高まる事を先日お話しましたが、今回は歯周病にかかっている妊婦さんが出
産すると、早産になって低体重児を出産する危険が高まるという話題です。

 これは、日本人を対象にした疫学調査でわかったもので、ライオン主催の健
セミナーで、北海道医療大学歯学部古市保志教授が報告したものです。

 口中に歯周病菌が増え、免疫のバランスが崩れると、免疫を担当する細胞か
ら血中にサイトカインという情報伝達物質が放出されます。このサイトカイン
が過剰に出ると炎症がおき、その結果歯肉や歯骨などの組織を破壊する酵素
出やすくなり、歯周病が進行するとされています。

 ところで、出産の際にはサイトカイン濃度が高まり、妊婦さんの子宮筋が収
縮する事が知られています。これが出産の引き金になるわけですが、もし妊婦
さんが歯周病の場合には、正規の出産時期以前(妊娠37週未満)に血中サイト
カイン濃度が高まるため、胎児が十分に成長していない状態で出産する早産に
つながる可能性があるとされています。

 そこで研究では、実際に48名の正常出産された妊婦さんと、切迫早産の状態
にあった妊婦さん40人を対象に出産状況を調べました。

 その結果、正常妊娠の人に比べて、切迫早産で早産・低体重児を産んだ妊婦
さんでは、歯周病菌の数は約4.5倍、血清中のサイトカイン量は約14倍多い事が
わかったそうです。
 この結果から、歯ぐきの状態やサイトカインの多さと、妊娠期間の長さには
明らかに相関関係があり、妊婦さんは早めに歯周病であるかを調べる事が重要
とされています。

 また、妊娠9〜21週までの400人の妊婦を対象にしたチリで行われた臨床試験
で、歯周病を治療した場合には、早産・低体重児の出産頻度が約5分の1に低
下したという報告があるそうです。
 従って、妊娠後でも歯周病を治療すれば、低体重児出産のリスクを減らす事
が可能と考えられますので、妊娠が分かったら、是非歯周病の検査をなさって
ください。

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                               (ルター)

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