抗炎症薬は、長期の膝関節炎治療には効果がない

●抗炎症薬は、長期の膝関節炎治療には効果がない

 膝関節炎をはじめとした変形性関節炎は、老化などにより関節組織に異常が
生じ、関節部に激しい痛みと炎症反応が生じるものです。
 勿論、これに対する薬はいくつもあるのですが、特によく用いられる抗炎症
薬が長期間の膝関節炎には余り効果がなく、むしろ副作用が問題であると警告
されています。

 これは、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬、nonsteroidal anti-inflammatory
drugs)と呼ばれる抗炎症薬で、関節炎の治療に非常に多く使用される薬となっ
ているものです。例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、セレブレックス
どがよく用いられています。

 この報告は、ノルウェーのBergen大学のJan Magnus Bjordal博士らが、英
国医学誌(British Medical Journal, Nov. 19, 2004、online issue)に報
告したもので、膝関節炎の1万1千人を対象とした、NSAID薬を比較した23の研
究報告を分析しました。

 その結果、NSAID薬を短期間使用する場合は、変形性関節炎による関節の疼
痛に有効であり、NSAIDは治療に重要な薬剤であることを確認できました。
 しかし、数ヶ月以上にわたる長期間の使用した場合は、鎮痛剤としての効果
は明確でなかったそうです。 

 今までに長期投与の研究例はなく、慢性の変形性関節炎の治療に長期間投与
した場合のNSAIDの有効性と安全性について調査の必要性を訴えています。
 また、関節炎の専門医でメリーランド大学のMarc C. Hochberg教授によると、
NSAIDは関節炎治療の第一選択薬として無条件に使用すべきでなく、特に使用
が長期間にわたる場合は副作用の問題を考慮すべきとしています。

 実際、NSAID薬を服用した場合には胃や腸管での出血がおこりやすくなり、
年間1万6千人の死亡と関係しているということです。
 NSAID以外の薬ではCox-2と呼ばれる新しい抗炎症薬が最近使われるようにな
ってきています。これは出血の副作用のない期待の新薬ですが、つい最近心疾
患や心臓発作の副作用がある事が報告されています。
 従って、Hochberg教授は、関節炎にはNSAIDを使用する前に、先ずよりシン
プルな鎮痛剤でアセトアミノフェンなどの薬(例えばタイラノール)を使用し
た方がよいとしています。
 勿論この薬も副作用があるのですが、今までに使用経験が多く、また抗炎症
薬の様な出血の危険がないなどの有利さが再確認されているものです。

 従って、治療を行う前に先ず医師や薬剤師とよく相談し、それぞれの薬のリ
スクをよく理解して、自分にあった薬を選択するようになさってください。
 また、医学的治療以外にも、体重を減らしたり、生活習慣を考え直したして
薬の使用をなるべく減らすような努力も重要です。

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